2011年7月24日テレビが終る日:公共事業=地上デジタルテレビ放送の破綻

平成22年7月24日、約6年後、地上波テレビ放送は終了し、現在のアナログテレビは使用できなくなります。*1と書くと驚く人もいるかもしれません。*2
政府は、ナチスのラジオ普及・新聞廃刊政策よろしく、国民世論の議論を経ることも無くアナログテレビ放送廃止を決定し、アナログテレビ放送廃止を前提とした電波法を改悪*3しました。
アナログ放送廃止を含む改悪電波法が施行されたのは2001年7月25日ですから、電波法が再改正されない限り、遅くとも西暦2011年7月24日までにアナログ放送は廃止されることになります。

地上波アナログ放送の廃止は、総務省の計画によれば、以下のような目標とプロセスで実施されることになっています。

総務省 ブロードバンド時代における放送の将来像に関する懇談会
「ブロードバンド時代における放送の将来像に関する懇談会」とりまとめ 2003年4月15日
デジタル放送推進のための行動計画(第3次)2003年4月15日
http://www.soumu.go.jp/singi/b_kondan/b_kondan_03.html

(イ)設定する普及目標
1)  普及世帯数に関する目標
(a)最終普及目標
・ 2011年初頭までに、全世帯(4800万世帯)への普及
(b)当面の普及目標
・ 2006年のワールドカップ ドイツ大会の時点において、1000万世帯への普及
・ 2008年の北京オリンピックの時点において、2400万世帯への普及
(c)ロードマップ
・ 図1のとおり


地上デジタル放送計画を作った郵政省(総務省)地上デジタル放送懇談会。

1998年10月26日(月) 地上デジタル放送懇談会 報告書
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrelease/japanese/housou/981026d701.html

民放連の意見。
「地方民放経営が破綻する可能性が高い」とまで危機感を自覚していたのなら、総論賛成の立場ではなく各論賛成にしておけば良かったのではないかと。
民放連幹部は“地方民放経営の破綻→キー局による系列化促進”を目指していたという疑惑もありますが、その疑惑には一定の根拠があるように思います。

平成10年7月16日(社)日本民間放送連盟
地上デジタル放送懇談会」中間報告に対する意見

5.デジタル化コストの軽減
地上デジタル放送用周波数確保のために莫大なアナログ周波数移行コストがかかると予測されるが、電波法の定めにあるとおり、基本的には国が負担の先頭に立つべきものであり、そうでなければ地上放送のデジタル化について国民的な納得は得られまい。中間報告ではデジタル化による"広告収入の増大"をあげているが、民放連研究所「デジタル時代の民放経営」報告書が詳細に分析しているように、そうした可能性は低く、かえって過重なデジタル化投資により地方民放経営が破綻する可能性が高い。過大なデジタル化コスト負担に対し、放送事業者の努力が十分及ばない部分については、言論報道機関の自主自律を妨げることのないような形で公的な支援措置を講じる方策を検討すべきである。

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地上デジタル放送政策の批判 税金収奪のシステム


アナログ放送廃止→デジタル放送の開始に対する批判の内容は、大きく分けて三つあります。

1、デジタル化は、事業関係者だけが潤うムダな公共事業である
2、デジタル化は、本来必要のない経済負担を国民に強いることになる
3、デジタル化は、国民統制、情報管制、個人管理社会化を強める

まず、1について。
これは、もう既に放送局や通信関連業者に、税金が渡り始めています。
たとえば、最近では、e-Japan重点計画2004は地上デジタル放送について「引き続き税制・金融上の支援を行う」と明記しています。

IT戦略本部(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)
e-Japan重点計画2004 平成16年6月15日決定
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/040615honbun.pdf

このように家庭におけるIT 革命を支える基盤となる放送のデジタル化を推進し、全国において2006年までに地上デジタル放送を開始するとともに、2011年までに地上デジタル放送へ完全移行するため、地上放送のデジタル化に伴うアナログ周波数変更対策を講ずるとともに、デジタル放送施設の整備に対して2004年度も引き続き税制・金融上の支援を行う。

与党の強行採決で成立した平成16年度予算。今年度から約202億円、来年度から324億円が放送局にたんまり入ります。たんまりと。

財務省
平成16年度予算書一般会計予算*4 
一般会計各省各庁予定経費要求書等/予定経費要求書主要経費別表/総務省予算 p358/丁号 国庫債務負担行為要求書
http://www.bb.mof.go.jp/server/2004/xml/200411001000358a.xml#p358

総務本省
特定周波数対策交付金交付事業 52,633,122千円
特定周波数対策交付金
平成16年度 20,220,238千円
平成17年度以降 32,412,884千円
事由  特定周波数変更対策業務を行う者に対する特定周波数対策交付金交付事業については、その業務を円滑に実施するため、あらかじめその業務に要する費用に充てるための交付金を5箇年度にわたって交付する旨の決定を行うことを要するため。

限度年限は5年間なので、国民が負担する特定周波数対策交付金交付事業の合計額は1498億7177万4千円。5ヵ年の事業予算の総額は、ざっと1500億円。全部私たち国民が払っているお金です。納税者ひとりあたり2000円ぐらいが放送局に地上デジタル放送の設備投資の交付金として交付される計算になります。
しかし、これだけ多額の設備投資援助しても、地方の放送局は困窮し、キー局に吸収される可能性が高いと言われています。
そこで政府は、日本政策投資銀行に「情報通信網整備・利用高度化促進」の名目で、放送局にお金を貸し出しています。

日本政策投資銀行/投融資のご案内/事例紹介/情報通信ネットワーク事例紹介/情報通信網整備・利用高度化促進
http://www.dbj.go.jp/japanese/loan/indicator/001.html

対象事業 4)放送デジタル化推進事業
金利
  地上デジタル放送施設・制作環境の整備事業 政策金利 III (平成23年度末まで(ただし、地上デジタル放送の普及状況に応じて2年毎に見直し)。 )
  周波数移行のための施設の整備事業 政策金利 II
融資比率 40%

日本政策投資銀行の平成16年度 政府関係機関予算*5は以下の通り。
情報通信ネットワーク関連事業で780億円の融資事業予算が組まれています。ちなみに15年度の情報通信ネットワーク関連融資事業予算は1050億円でした。

平成16年度 政府関係機関予算 (当初予算)
(添附)平成16年度政府関係機関予算参照書/平成16年度政府関係機関収入支出予定計算書/甲号収入支出予定計算書/日本政策投資銀行/(p.141) 甲号収入支出予定計算書/(p. 145) 平成16年度事業計画
http://www.bb.mof.go.jp/server/2004/xml/200413001000145a.xml#p145

2.貸付(出資を含む。)の対象及び金額は
情報通信ネットワーク 78,000,000千円

地上デジタル放送計画の事業者負担については、最近、放送事業者などに融資している日本政策投資銀行から驚くべき情報が出てきました。
平成16年6月2日に開催された財務省所管の日本政策投資銀行第19回運営評議員*6で議論された日本政策投資銀行情報通信部作成の「地上テレビ放送の現状とデジタル化への対応について」*7によると、地上デジタル放送による経済波及効果と設備投資額について以下のように評価しています。

テレビ局の設備投資負担
・民放連の発表(2003)によれば、全放送局のデジタル設備投資負担は8,082億円

デジタル放送懇は、放送デジタル化にかかる設備投資負担額は8,082億円と積算しています。
特定周波数対策交付金(無償提供)の5ヵ年分の事業予算総額は1500億円。全額たんまり放送局がもらったとしても、全体の投資額の2割に満たない交付額です。ということは、約6500億円(たぶん実際にはもっと多くの額)は、各地の放送局が自腹を切るなり日本政策投資銀行から融資を受けるなりして調達し、設備投資しなければなりません。
注目すべきは、設備投資の放送局負担に、地方と中央との間に大きな格差があるという点です。

財務省所管の日本政策投資銀行第19回運営評議員会資料「地上テレビ放送の現状とデジタル化への対応について」(日本政策投資銀行情報通信部作成)より「デジタル化投資後の債務償還年数試算」

※赤文字は(キタノ)が追加したコメントです。

上のグラフで明らかな通り、キー局や基幹局の設備投資負担は少なく、地方局の設備投資負担が大きいことがわかります。債務償還年数は8年から13年。地方テレビ局は長期間、赤字経営を強いられることになるでしょう。自転車をペダルをこがずにブレーキかけながら上り坂を走るようなもので、いつ倒れておかしくない状況です。
日本政策投資銀行情報通信部は、前掲資料の「ローカル局の課題」の中で、結論としてこう警告しています。

デジタル化投資はローカル局独立U局にとってはかなりの投資負担となる。現在の損益状況を前提とすれば赤字に転落する事業者が続出する。
今後、他メディアとの競合が強まり、広告市場における地上波テレビの位置づけが低下する可能性もある。

つまり、結論としては、今のままだと地方の放送局に地上デジタル放送事業融資名目で出している日本政策投資銀行の放送デジタル化推進事業融資(国民の税金)は、不良債権化して戻って来ない可能性が高い!
もうすこしツッコミを入れるとすれば、地上デジタル放送計画はさんざん国民の税金をつぎこんだあげく、地方テレビ局を破綻に追い込み、キー局とのハゲタカ的吸収合併により系列化が加速するのではないか。それが「地上デジタル放送」なるもの裏シナリオであり、マスメディア集中排除原則の緩和*8によるローカル局の統合も、裏シナリオを補完させるための段取りの一部ではないか、と思うわけです。
キー局は、自分では設備投資のために自腹を切ることなく、国民の税金を使って地方局に設備投資させ、放送局が財政破綻したらおいしい事業だけ合併吸収すれば良いだけ。ハゲタカやハイエナのような弱肉強食の世界。
問題は、そういう強者が弱者を食い尽くす的な経済原理が放送業界を支配することが、はたして本当の意味で国益・国民益につながるのか、という点です。
放送局の系列化、一極集中が加速すれば、キー局の番組だけがより多く全国に流され、放送番組の多様性はさらに損なわれ、つまらないテレビになっていく可能性もあるでしょう。

つまらない番組
 ↓
放送局の経営の悪化
 ↓
放送局の系列化
 ↓
さらに番組がつまらなくなる

こういう悪循環が回復不能なところまで悪化し、寡占化したテレビ業界が、巨大な恐竜のように寡占化したこと自体が原因で破綻する可能性もあるかもしれません。
ま、テレビ業界が自滅するならそれはそれで結構なことで日本をさんざん悪くしたテレビメディアが自滅すならザマーミロだ、という感情も私には無きにしもあらずですが、国民の多くが情報生活の多くをテレビに依存しているという状況を考えると、そう安易に考えるわけにもいきません。
仮に放送局の経営破綻により融資額の2割がこげつくと仮定すると、1300億円。一般会計の交付金と合わせて2800億円の税金が消えてしまいます。
経営破綻しないまでも、放送サービスについては、NHKなら受信料を払っている国民、民放ならテレビ広告の商品を買っている消費者が広告料金の商品価格への転嫁(または商品品質の劣化)という形でデジタル化のコストを負担させられる可能性はあるでしょう。
いずれにせよ、地上デジタル放送の財政問題は、最終的には国民がツケを支払う経済構造になっていることは間違いなく、ダムや高速道路やグリンピアと同様、国民からお金をしぼりとって一部の組織に再配分させるための旧態依然としたバラマキ公共事業&国民負担押しつけ型経済システムと言えます。*9
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■普及をどうすすめるのか

もうひとつの問題は、普及をどうすすめるのかという問題です。
日本国民みんなが地上デジタル放送を望みほしがっているのなら、市場経済効果によりコストは小さくなり、最終的な各人の負担は最小化するとともに満足は最大化されます。あくまでも理論の上では。
しかし、現実は違います。なぜか。
地上デジタル放送は、誰もが望みほしがっているという前提は成立しておらず、政治的・作為的に作り出した需要にすぎないから、です。
具体的に書きましょう。アナログからデジタルに切りかえるためには、デジタルチューナーが必要ですが、デジタルチューナーが無料で各世帯に配布されるわけではなく、国民の自己負担が前提になっています。
2011年初頭までに、全世帯(4800万世帯)普及というとてつもない計画が計画通りにすすみ、4800万世帯が仮に1台2万円のデジタルチューナーを買うと仮定すると、9600億円の需要が発生することになります。放送通信関連業界の企業(の支配者、恩恵者)にとっては、とてつもなくデカイ“臨時ボーナス”です。
ムダな公共事業の代表格であるダムの建設事業費用は、ひとつダムをつくるごとに150億円ぐらいかかります。*10 つまり、デジタルチューナーの国民負担額は、60箇所以上の新設ダムを作れるぐらいの巨大な需要であり、国民負担です。
ところで、4800万世帯の国民が負担しなければならないデジタルチューナーの価格がいくらになるのか。価格の問題は普及の進捗とも関係してきます。
価格コムで2004年7月22日現在のデジタルテレビチューナーの実売価格を調べました。

価格.com - デジタルテレビチューナー
http://www.kakaku.com/sku/pricemenu/bsd.htm
価格.com スペックSEARCH
http://www.kakaku.com/prdsearch/bsd.asp
12件が検索されました
DXANTENNA DIR-300 49,800円
VICTOR TU-MDS50 49,875円
PANASONIC TU-MHD500 50,979円
PIONEER SH-DT3 54,600円
SHARP TU-HD100 54,980円
FUNAI CHU-1000D 57,800円
SONY DST-TX1 60,250円
FUJITSUGENERAL P-TU2000JS 60,650円
HITACHI DTU-H5000 62,790円

最安値で49,800円です。さすがに一台10万円という機種は見当たらなくなりましたが、それでも高いです。
というか、前述した私の1台2万円という仮定価格そのものが破綻しています。苦笑。
一応、デジタルチューナー付テレビも検索してみました。

価格.com スペックSEARCH
http://www.kakaku.com/prdsearch/tv.asp
25件が検索されました
SANYO ヴィゾン C-25DT1 (25) 79,265円 25inch
SANYO ヴィゾン C-25DT2 (25) 80,948円 25inch
SANYO ヴィゾン C-28DT1 (28) 87,850円 28inch
SANYO ヴィゾン C-29DT1 (29) 88,969円 29inch
SANYO ヴィゾン C-28DT2 (28) 95,952円 28inch
PANASONIC TH-28D55 (28) 99,000円 28inch
TOSHIBA 28DX100 (28) 107,940円 28inch
PANASONIC TH-28D50 (28) 117,500円 28inch
SANYO ヴィゾン C-32DT1 (32) 119,960円 32inch
PANASONIC TH-32D55 (32) 124,800円 32inch

25インチのデジタルチューナー内蔵テレビの最安値は79,265円
ちなみに25インチのアナログテレビの最安値は21,500円。チューナー機能が付くことによって、アナログよりも5万円以上負担価格は増えています。デジタルチューナー以外に、別途デジタル放送対応のアンテナを買いなおさなければならない地域・家庭もあります。*11
仮に1億2000万台のテレビのすべてに5万円のデジタルチューナーがつくと仮定すると、テレビを持っている国民は6兆円の出費をする計算になります。4800万世帯が仮に最安値の5万円のチューナーを世帯で1台買う場合だと、2.4兆円の国民負担になります。
6年後までに2兆円もの金額を負担させられるのですよ、みなさん。30億円のグリンピアなんて甘い甘い。卓袱台ひっくり返したくなるような状況じゃありませんか? 卓袱台が無い私の家ではどうやって怒りをぶつければいいんですか。*12
テレビは絶対に必要なものだからどんなに高くても国民は買ってくれるだろう、などという甘い目算が、総務省の官僚や放送業界やデジタル家電業界にあったのかもしれません。
でもそれは、米を買い占めて米蔵にしまって高値で売りさばく悪徳商人と同じじゃないですか? やっぱり悪いお代官もグルですか? 国民はナメられてますね。 「越後屋*13、おぬしもワルよのぉ。」「お代官様*14こそ」。
“アンカーリサーチ with goo”のインターネットアンケート*15は、以下のような調査結果を公表しています。

今後3か月以内の地上デジタル放送対応機器の購入に関して、「対応テレビを購入予定」が3.1%、「対応チューナーを購入予定」が1.4%。また「3か月以内に購入予定がない」が76.4%、「分からない」が19.2%だった。また「今後3か月以内に対応機器の購入予定がない/分からない」と回答した941人に、購入時期はいつ頃になるか質問すると、最も多かったのは「アナログ放送が終了する2011年」で30.0%。次いで「3〜4年後」17.2%、「5〜6年後」11.5%という結果だった。

比較的デジタル家電に興味があると思われる大都市のインターネットユーザーでさえも、8割近い人が購入予定が無く、買うとしてもアナログ放送が終了する2011年と回答する人が一番多いという結果が出ています。
つまり、地上デジタル放送の普及に、国民は意欲的ではないという結果が、統計上も出ていると考えられるわけです。
東京よりも大阪、大阪よりも名古屋のデジタルテレビの普及や意欲が少ない(名古屋は東京の半分しかない)という統計結果を考えれば、全国での地上デジタル放送への受容環境・購入意欲はアンケート結果よりもさらに低いと予想されます。
とすれば、イノベーションによる価格低下を考慮したとしても、現在1台5万円のデジタルチューナーの価格が2万円ぐらいに劇的に下がるほど急速に普及するとは考えられず、アナログ放送終了時期になってもチューナーを持っていない国民がかなり出ることは避けられないでしょう。
前掲のアンケート結果によると、チューナーの価格帯について、

受信機を購入する場合、支出できる値段として「5万円未満」が最多で78.0%。そのほか「5万円から10万円」13.7%、「10万円から20万円」5.3%と続いた。

という結果も出ています。
「5万円未満」が最多で78.0%。しかし、価格.comの調査では、5万円未満のチューナーは2種類しかありません。一般小売りで6万円、地方では7〜8万円が実売平均価格でしょう。まだまだ普及価格帯とは言えない状況です。
「5万円未満」の回答者がどれくらいの価格帯を想定しているのかは不明ですが、おそらく想定価格帯は2万円以下ではないでしょうか。実売1万円未満がベストですね。
とにかく、普及については総務省地上デジタル放送の計画は甘い見通しだと考えざるを得ません。
もし実売1万円程度の価格帯にならないままアナログ放送が終了したら、私は潔くアナログテレビを捨てます。 マニフェストです。
テレビを捨てたらチューナーを買う必要もなくなりますし、くだらないテレビのプロパガンダ番組や本来買う必要のない商品の広告も見ることもなくなりますしね。古いテレビはゴミ箱へポイ、古いテレビ放送業界もゴミ箱へポイ、です。どうせあまりテレビは観ていないし観たい番組も無いので、生活上困りません。
アナログ放送が終了する6年後には、インターネットで世界中の娯楽やニュースなどの映像を海外の放送局から安価に買うことができるようになっているでしょうから、つまらない地上波テレビに執着する必要もなくなっているかもしれません。
実はもう既に、欧米のケーブルテレビ局などから、世界中のテレビ番組をインターネットのブロードバンド経由で配信視聴できるサービスがあります。まだ価格が高く、画質もトラフィック環境により悪くなるケースもあるので地上波放送並のクォリティは維持できていませんが、そういう問題も6年後には解決していることでしょう。
あわててデジタルチューナーやデジタルテレビを買う必要はありません。安くなるまで何年でも待ちましょう。
地上デジタル放送の破綻については、坂本衛氏が情報を提供していますので、そちらを参照してください。

放送デジタル化(地上デジタル放送、BSデジタル放送CSデジタル放送
http://www.aa.alpha-net.ne.jp/mamos/digital.html
地上デジタル放送現行計画「すでに破綻」の決定的な理由10
http://www.aa.alpha-net.ne.jp/mamos/digital/hatan.html

破綻の理由1 1億2〜3000万台のテレビ置き換えが物理的に不可能。
破綻の理由2 ハイビジョン中心だが、視聴者・国民大衆の多くは高画質・横長に興味なし。
破綻の理由3 テレビの6割が小型だが、それはハイビジョンに適さず、どうなるか不透明。
破綻の理由4 2011年段階で民放は地上デジタル放送を全世帯の2割(900万世帯以上)に届けられない見通し。
破綻の理由5 アナアナ変換が終わらないため、2006年末までに全国で放送開始は不可能。
破綻の理由6 全国CATVや都市難視聴CATVのデジタル化対策が一切手つかず。
破綻の理由7 売りのひとつ携帯受信のメドが立たたず、局のメリットも見えない。
破綻の理由8 民放は基本的にサイマル放送だから、高画質・横長以外の魅力に欠ける。
破綻の理由9 計画の責任の所在が極めて不明確。国は総務省以外何もしていない。
破綻の理由10 テレビは視聴者・国民大衆のものなのに、その意見も都合も一切聞いていない。

上の情報によると、デジタル化させなればならないテレビの全台数は1億2000万台あると言われているのに、2003年のデジタルチューナーの販売台数は82万台。夏のボーナス期でもわずか9千台しか売れていなかったそうです。
2004年7月8日のNHKの会長の話*16では、根拠不明ですが、地上デジタル放送対応テレビ(チューナー)の累計出荷台数は108万台。あくまでも生産者“出荷”であって売れ残っている数は含まれていないわけですが。
デジタル放送がすでに開始されているというのに、デジタルテレビの対全世帯出荷率が10%どころか、1%にも満たない。「お笑い放送デジタル化」という本が必要ですね。
そもそも、著作権管理(コピーコントロール)のためにお金を支払わないとデジタル録画できない地上デジタル放送*17なんて、国民にとって普及させる意味が無いでしょう。録画してコピーする楽しみがあるという前提の上に番組コンテンツの魅力があるということを、強欲な普及推進者たちはわかっていないのかもしれません。
現時点ではアナログ録画だけなら録画可能で、現時点ではデジタル録画はプライバシー提供条件のもとで1回限りの録画可能だそうです。でも、デジタル化したのにデジタル録画できないなら、放送をデジタル化する意味が視聴者にとってありません。アナログで十分です。
さらに大きな問題は、著作権管理のために、デジタル放送を受信するためには、B-CASカード*18の使用が必須となっているという点です。*19
B-CASカードを入手するためには、B-CAS使用許諾契約約款*20の同意が必要で、氏名、住所、性別、生年月日、電話番号などのプライバシーの提供が義務化され、さらにレンタル、リース、賃貸、譲渡等による第三者使用の禁止などの義務が課されます。また、番組を視聴することによって視聴したという情報が放送局などに自動的に通知されることもあります。*21
つまり、誰がどんな番組を視聴するのかという情報がBS Conditional Access Systems社によって一元的に把握・管理されるとともに、匿名でデジタル放送を視聴することが困難になるという前提が、地上デジタル放送にはあるわけです。(“技術的”には裏業界で(わりと堂々と)売られているキャンセラーを使うことで匿名受信は可能ですが) ここに、デジタル化は、国民統制、情報管制、個人管理社会化が強めるのではないかとの批判の根拠があります。
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■参考情報、リンク

総務省プロパガンダサイト*22
新しい楽しい地上デジタルテレビ放送-パーフェクトガイド
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/whatsnew/digital-broad/index.html

アナログテレビはなくならない(地上波デジタル凍結を提言する)
http://www.hirataku.com/contents/seisaku/seisakus/analog1.htm
http://www.hirataku.com/contents/seisaku/seisakus/analog2.htm

地上波デジタル化の一旦停止を 山田肇
http://www.rieti.go.jp/it/column/column030430.html

高知県知事橋本大二郎
June 21, 2004 テレビが見えなくならないために(6月17日)
http://daichanzeyo.cocolog-nifty.com/0403/2004/06/post_25.html

一つだけ大きな問題があります。
と言うのも、デジタル化を進めるためには、新しい鉄塔を建てなくてはならないのですが、全国の放送会社の経営体力を考えますと、そのための予算は限られていますから、高知県を例にとれば、現在、人口比で8パーセントほどの難視聴の地域が、17から18パーセントと、10ポイントも広がるのではないかと危惧されているのです。
・・・・・・
収益性のいい、関東や近畿地区などのキー局が、全国的なテレビCMの市場を確保するといった視点から、お金を出しあって、地方に必要な鉄塔を建設してはどうかとの提案ですが、当然のことながら、キー局からの強い反発が予想されます。

無謀な放送デジタル化→地方テレビ局への過度な財政負担押しつけ→放送事業計画の縮小→視聴地域の縮小や放送広告値上げによる価格転嫁→泣きを見るのは結局県民→しかし地方で対応するにも限界がある→八方塞がり→無謀な放送デジタル化による責任の所在は誰?
デジタル化の恩恵を一番受けるのはキー局なのでキー局に鉄塔とか中継局のデジタル化の負担をさせるよう電波法の見直しも含めて、総務省は指導すべき。なのですが、そういう対応はもう手遅れでムダだし、ロクな番組作ってないから、むしろ積極的にテレビ放送業界を解体縮小させてしまえ! という感情論も捨て難いです。
テレビ放送の時代は終った、地方のテレビの視聴者数は地方新聞並に落ちCMの訴求力は激減する、という前提での対応も、国民として、広告業界として、広告主として必要かもしれないです。

NHK地上デジタルって汚くない?
http://hid.cocolog-nifty.com/emptylot/2004/07/nhk.html

高画質がウリというのは嘘なのか…。なるほどなるほど。

地上デジタル放送の功と罪
http://www.itmedia.co.jp/broadband/0306/02/lp13.html
http://www.itmedia.co.jp/broadband/0306/02/lp13_2.html

電通総研が斬る! 地上デジタル放送への論点
http://www.itmedia.co.jp/survey/0312/10/svn01.html
http://www.itmedia.co.jp/survey/0402/05/svn01.html
http://www.itmedia.co.jp/survey/0404/22/svn01.html
http://www.itmedia.co.jp/survey/0405/06/svn01.html
http://www.itmedia.co.jp/survey/articles/0406/03/news002.html
http://www.itmedia.co.jp/survey/articles/0406/17/news001.html

デジタルARENA / 知っておきたい!地上デジタル放送の新常識・完全版 (普及促進派の解説記事)
http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/

http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/index2.shtml
http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/index3.shtml
http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/index4.shtml
http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/index5.shtml
http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/index6.shtml
http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/index7.shtml
http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/index8.shtml
http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/index9.shtml
http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/index10.shtml
http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/index11.shtml
http://arena.nikkeibp.co.jp/tokushu/gen/20040311/107893/index12.shtml

岩手日報 論説 2003年1月13日
地上波デジタル放送 視聴者への説明を急げ
http://www.iwate-np.co.jp/ronsetsu/y2003/m01/r0113.html

森祐治・情報経済ブログ 開始されたデジタル地上波放送だが
http://blog.japan.cnet.com/mori/archives/000871.html

[D-pa] 社団法人 地上デジタル放送推進協会(プロパガンダの本拠地)
http://www.d-pa.org/
現在のテレビ放送はいつ終了するの?
http://www.d-pa.org/schedule/finish.html
今使っているテレビで地上デジタルテレビ放送を見ることができますか?
http://www.d-pa.org/faq/view_q2.html

お使いのテレビが地上デジタルテレビ放送に対応していない場合でも、地上デジタルチューナーを接続すればごらんいただけます。

D-paのQ&Aは以下のように訂正すべきではないでしょうか。

Q 今使っているテレビで地上デジタルテレビ放送を見ることができますか?
A できません。地上デジタルテレビ放送は、地上デジタルチューナーを買い、有料番組にお金を支払えるお金持ちだけのための放送です。地上デジタルチューナーを買うお金のない低所得家庭では、現在のテレビは2011年7月24日にゴミになります。

D1端子でデジタル放送も録画可能なTVキャプチャカードの予約開始
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20040717/etc_mtv24hf.html

予価は29,800円で安くなったかなと思ったら、D1端子のDはデジタルのことではなく、端子の形状がDの字に似てるだけなのね。デジタル放送でも録画はアナログ。*23

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【脚注】

*1: あと8年でテレビが粗大ゴミ? http://www.aa.alpha-net.ne.jp/mamos/digital/tvgomi.html

*2:  「GALAC」2001年10月号のアンケートによれば、現在の地上テレビ放送が2011年に打ち切られることを見聞きしたことがある人は18・66%。5人に4人以上は知らないという結果が出ている。http://www.aa.alpha-net.ne.jp/mamos/digital/tvtada.html

*3: http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO131.html 電波法第七十一条の二 「総務大臣は、次に掲げる要件に該当する周波数割当計画又は放送用周波数使用計画(以下「周波数割当計画等」という。)の変更を行う場合において、電波の適正な利用の確保を図るため必要があると認めるときは、予算の範囲内で、第三号に規定する周波数又は空中線電力の変更に係る無線設備の変更の工事をしようとする免許人その他の無線設備の設置者に対して、当該工事に要する費用に充てるための給付金の支給その他の必要な援助(以下「特定周波数変更対策業務」という。)を行うことができる。 一  特定の無線局区分(無線通信の態様、無線局の目的及び無線設備についての第三章に定める技術基準を基準として総務省令で定める無線局の区分をいう。以下同じ。)の周波数の使用に関する条件として周波数割当計画等の変更の公示の日から起算して十年を超えない範囲内で周波数の使用の期限を定めるとともに、当該無線局区分(以下この条において「旧割当区分」という。)に割り当てることが可能である周波数(以下この条において「割当変更周波数」という。)を旧割当区分以外の無線局区分にも割り当てることとするものであること。 」

*4: 財務省 16年度予算書 http://www.bb.mof.go.jp/cgi-bin/bxss020a?rno=20 xmlとpdf形式で読めます。予算の異常さは、一般会計予算よりも特別会計 http://www.bb.mof.go.jp/cgi-bin/bxss020a?rno=21政府関係機関予算 http://www.bb.mof.go.jp/cgi-bin/bxss020a?rno=22 の方が重要だと思います。

*5: 平成16年度 政府関係機関予算 http://www.bb.mof.go.jp/cgi-bin/bxss020a?rno=22

*6: http://www.dbj.go.jp/japanese/about/council/19th/

*7: http://www.dbj.go.jp/japanese/about/council/19th/19_001.pdf

*8: 「放送行政の憲法」改正、マスメディア集中排除原則の縮小問題 http://d.hatena.ne.jp/kitano/20031205#p2

*9: 坂本衛氏「視聴者無視の地上放送デジタル化に公共投資350億円はなぜだ!?」も参照のこと http://www.aa.alpha-net.ne.jp/mamos/digital/naze350.html

*10: たとえば辰巳ダムの建設事業は140億円。http://www.nakaco.com/beversee.htm

*11: http://www.d-pa.org/howto/index.htmlhttp://www.d-pa.org/faq/view_q3.html

*12: それ考えていると夜も眠れません。クリックすると卓袱台と卓袱台の上に乗っかっているモノがひっくり返る「バーチャル卓袱台返し」をパソコンで楽しめるソフトを誰か開発してください!(かなり本気/笑).

*13: 社団法人電子技術産業協会デジタル家電委員会 http://home.jeita.or.jp/dha/ie-index.html 委員会参加企業一覧 http://home.jeita.or.jp/dha/COM/dha-kousei16.htm デジタル家電部会は、サンヨー、シャープ、ソニー東芝の四社、あたり?

*14:総務省と在京キー局経営者と、両方に人脈・金脈がある政治家あたり?

*15: 2004年7月15日発表 視聴方法はケーブルテレビ――60.7%【第4回:地上デジタルテレビ放送に関する調査】 http://japan.internet.com/wmnews/20040715/4.htmlhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040715-00000013-inet-sci

*16: http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040708-00000174-kyodo-ent NHK会長会見 http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/toptalk/k0407.html#03

*17: http://www.bpa.or.jp/copy_control/index.html

*18: BS Conditional Access Systems Co.,Ltd. http://www.b-cas.co.jp/ B-CASカードってなに? http://www.b-cas.co.jp/about.html

*19: 地上デジタルテレビ放送でも、B−CASカードが必要ですか? http://www.d-pa.org/faq/view_q4.html 「2004年4月から、民放やNHKが、著作権保護の目的でコピー制御信号を放送波に付加しますので、B−CASカードがないと視聴することができません。必ず、受信機にB−CASカードを挿入してください。」

*20: http://www.b-cas.co.jp/article.html

*21: B-CAS使用許諾契約約款第3条(ユーザー登録等)「お客様には、第3項に定める方法によるユーザー登録を行われるよう、お願いしております。」 http://www.b-cas.co.jp/article.html

*22: 広告会社に広告を発注しなくても政府が税金使って宣伝してくれるなんて、デジタル家電会社は濡れ手に泡ですね。ね、東芝ソニー、サンヨー、シャープさん。まさかこの四社の未公開株がどこかの政治家や官僚に渡っていて、放送デジタル化によって株価が高くなって株を持っている政治家はウハウハ、なんていうことはないでしょうね。

*23: http://78.cocolog-nifty.com/weblog/2004/07/d1mtvx2004hf.htmlコピーワンス放送の録画にも対応するとはいえ、取り込まれる画像はご存知の通りのアナログ画像である。オリジナルの画質をそのまま録画できるわけではなく、S端子より多少高画質かなという程度だ。よく誤解されているがD1端子というのは、3本あったコンポーネント端子を1つのケーブルにしただけで、形状がDの字に似てるから名づけられた