ゲーム規制:松沢知事の有害図書類規制論


神奈川県の松沢知事が、ウェブログ「松沢しげふみタックルレポート」で「ゲームソフトの有害図書類指定をめぐって」と題するコメントを寄せています。
松沢知事は、「残虐性の高いゲームが犯罪を誘発するかどうかの科学的証明は、まだ行われていないことは事実」と科学的に規制合理性が存在しないことを認めつつも、一部の漫画やゲームなどが「青少年の健全な育成を阻害するおそれのある有害な社会環境」であるとして、従来の有害図書類規制とその対象範囲の拡大する姿勢を表明しました。
松沢知事のコメントは、規制合理性がないことを知りつつ規制合理性があるとの前提で規制し続ける矛盾した態度の県政を追認するものです。
 


■松沢しげふみタックルレポート
http://matsuzawa.cocolog-nifty.com/
ゲームソフトの有害図書類指定をめぐって 2005年7月 7日 (木)
http://matsuzawa.cocolog-nifty.com/blog/2005/07/post_58fd.html

 
法の強制力を運用する知事に求められる最低限の“道徳”とは、県民の利益に適った合理的な政治を条例にもとづいて実行し、不合理な規制を廃すということでしょう。だとすれば、合理性が無いことを知りつつ合理性の無い規制を続けるという矛盾した知事の態度以上に、恥ずべき“不道徳”なふるまいは無いと言えます。
自分の守るべき最低限の“道徳”さえ守れない男が、子どもや親や社会に規範をもとめることなど、できようはずがありません。
松沢知事が県民の信義を曲解して道理が通らぬ世俗的感情論で愚策を県民全員に強制するのなら、県民の側も法の逸脱という実力行使によって不合理な姿勢に抵抗せざるを得ず、その結果として法の意義は失われることになるでしょう。
 
松沢知事の主張は多岐に渡っており、論点が複数ありますので、個別に検討します。
 


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まず、「有害図書類指定」に対する私の基本的な考え方ですが、本来、業界や流通市場における自主規制や浄化作用の中で淘汰され解決されるべき問題であり、行政による規制は最小限のものであるべきだと考えています。

 
規制の最小化措置は法の一般原則ですので、当然のことながら行政による規制は最小限のものであるべきですが、規制最小化原則は、その規制が目的達成効果として合理性があるという前提の上で判断される原則です。もし、規制が目的達成効果として合理性が認められない場合は、規制それ自体が間違っています。
松沢知事はウェブログで「残虐性の高いゲームが犯罪を誘発するかどうかの科学的証明は、まだ行われていないことは事実」と書いていますので、規制合理性は科学的はゼロであることを松沢知事自身が認めていることになります。
合理性の無い規制に、最小も最大もありません。
みなさん、たとえば「最小限の正しい殺人」などというものがあり得ますか? 戦争と死刑と正当防衛という例外を除いては、あり得ない。少なければ許されるというものではない。
それと同じように「最小限の有害図書類指定」というものもあり得ません。規制合理性の無い規制に、最小も最大もありません。
 


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しかし、青少年の健全育成に向けた社会環境を整えていくためには、このような自主規制を待っているだけでは状況は悪化するばかりであるというのが、残念ながら実態です。そこで、青少年の健全育成を阻害するおそれのあるものを、青少年の周囲からできるだけ排除しようという趣旨で、青少年保護育成条例の定めの範囲内において、一定の規制を行うことは必要であると考えております。

 
松沢知事はウェブログで「残虐性の高いゲームが犯罪を誘発するかどうかの科学的証明は、まだ行われていないことは事実」と書いていますので、残虐性の高いゲームが犯罪を誘発するとの前提で「青少年の健全育成を阻害するおそれのあるものを、青少年の周囲からできるだけ排除しようという趣旨で、青少年保護育成条例の定めの範囲内において、一定の規制を行うこと」は、不必要でしょう。
 


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まず、審査のあり方です。前例もないことで、様々な検討を行いました。その結果、県内の販売店において誰でも購入できる状態で陳列されており、パッケージの表示から残虐な内容が推測されるものや、新聞等で話題になったものなどを数点選んで購入し、その中から、子どもたちへの現実的な影響を重視し、対象の現実性(殺傷又は暴力の対象が現存の生命体と認められること)、手段の現実性(殺傷又は暴力の手段が現実に採り得ると認められること)、場面の現実性(ゲームの場面設定が限りなく現実の社会に近いと認められること)の3つの要件全てに該当する1本を、諮問することとしました。
その際、ゲームソフトは通常の雑誌などとは違い、ゲームを操作し先のシーンへと進んでいく中でしか新たな場面が現れてこないという特徴があるので、ゲーム操作の上手な職員に実際にゲームをやってもらい、それをビデオで撮ったもので審議していただくという手法をとったものです。審査委員が判断するにあたって、必要な情報は整理しお示しできたと考えています

 
知事の見解では、有害図書類指定を受けたゲームソフトウェアは、「殺傷又は暴力の対象が現存の生命体」であり、「殺傷又は暴力の手段が現実に採り得」るものであり、「ゲームの場面設定が限りなく現実の社会に近い」ものであると認められると判断されていることになります。
松沢知事が言うところの「対象・手段・場面の現実性」は、青少年を不健全に育成させる原因なのでしょうか?
残念ながら、科学的な知見ではその認識は否定されます。
既知の科学的な知見によれば、青少年の犯罪行動と「対象・手段・場面の現実性」とは因果関係がありません。描写が現実的であればあるほど有害だとの認識は、世俗的な迷信のようなものにすぎず、科学的な根拠がありません。少なくとも、松沢知事は、そのような判断基準が科学的合理性があるとの根拠を県民にいささかも示していません。
なぜ判断基準の科学的合理性について説明しないのでしょうか? 説明できないからではありませんか?
 
既知のメディア効果研究が示していることは、暴力行為に対して近親者から対価や称賛を得るなど、評価や共感が高ければ高いほど攻撃性を増すということです。
描写の現実性ではなく、主人公をとりまく人間関係が暴力に肯定的かどうかによって影響が左右されます。そのため、攻撃性の誘発メカニズムは、ごく限られた条件でしか誘引されないというのが、既知の科学的な知見です。
たとえば、ゲームの一場面で暴力行為が行われていたとしても、生き残ることがミッションの一部になっているゲームの場合は、暴力行為そのものに対して近親者から対価が支払われるのではなく、正当行為として暴力が認められているにすぎないわけですから、攻撃性の誘発は限定的です。
また、ゲームの主人公がマフィアやギャングから依頼を受ける流れ者のような場合は、そのような主人公と同じように非合法活動を職としている犯罪者がプレイすれば攻撃性は増すかもしれませんが、ゲームを購入する人は一般の人ですから、プレイヤーの暴力行動で攻撃性が誘発されることにはなりません。
平成17年6月7日に有害図書類指定を受けた「グランド・セフト・オートIII」は、まさにゲームの主人公がマフィアやギャングから依頼を受ける流れ者という設定であり、一般市民とはまったく異なる非現実的な状況の中で非現実的主人公をプレイヤーとしてプレイするゲームですから、そのような主人公の暴力行為表現によって攻撃性が誘発されることは科学的にはあり得ないと思われます。
したがって、「グランド・セフト・オートIII」を有害図書類指定したことは誤りであり、「対象・手段・場面の現実性」を根拠にしたことも誤りです。
 


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次に、規制の効果です。確かに本県だけで規制しても、効果が薄いのは事実です。そこで、現在、首都圏の3都県(東京都・埼玉県・千葉県)に対して、同一の対応をとっていただけないか、働きかけているところです。

 
効果が無い規制は、規制の是非の議論以前の問題として、規制手段として不適切であろうと思われます。
松沢知事自身が「効果が薄いのは事実」と認めているのであれば、少なくともそのような方法を規制手段として選択することは誤りであって、将来において効果が発生すると仮定できたとしても、規制する時点で効果が薄いことがはっきりしているのですから、少なくとも現時点で効果の薄い規制は中止するべきであろうと思われます。
効果があると思って規制するなら道理は通りますが、効果が薄いと自覚しているのに規制するのは道理が通りません。
たとえば、おまじないを信じている信者がおまじないをするのは道理が通っていますが、おまじないに効果が無いことを知っているのにおなじないをすることは道理が通りません。それぐらい松沢知事は道理の無い政治をしています。こんな道理の無い政治に県民が納得するとでも思っているのでしょうか? 
 


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ただ、ゲームソフトの問題は、これまで各都道府県でも問題視しながら対応に苦慮していたものであり、リーディングケースとしての抑止効果は高いのではないかと考えています。現に、コンピューターエンターテインメント協会でも、18歳未満への販売について、自粛を検討していただけるとの動きも出てきています。

 
松沢知事の認識では、有害図書類指定によって18歳未満への販売について自粛がすすむと認識しているようです。
しかし、松沢知事が知事として実際にやった行動は、松沢知事が示した認識とは全く逆です。18歳未満への販売について自粛されているゲームに対して有害図書類と指定したのです。
平成17年6月7日に有害図書類指定を受けた「グランド・セフト・オートIII」を販売しているカプコン社は、同日付プレスリリースでこう書いています。
 

神奈川県における「グランド・セフト・オートIII」の有害図書類指定について 2005/6/7
http://www.capcom.co.jp/ir/news/pdf_page/050607.html

本ゲームは米国で創作されたものの日本向け修正版ですが、当社は本ゲームを大人のエンターテインメントと位置づけ、18才以上を対象として販売をしてまいりました。
具体的には、当社は、本ゲームについて、特定非営利活動法人である「コンピュータエンターテインメントレーティング機構(以下「CERO」といいます。) 」のレーティングを受けました。それに従い、本ゲームの前面に「18才以上対象」のシールを貼り、また赤に白抜きのシールで「このゲームには暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています」との表記をし、販売方法については小売店に対して、本ゲームの区分陳列を依頼しております。
今回の指定により神奈川県が達成されようとしている目的は、上記のような関連する当事者間の協議・協力により達成することができると考えてまいりましたが、今回の指定は、このような取り組みを一顧だにされておらず、非常に残念であります。

 
神奈川県松沢知事は、青少年に販売されていない18歳以上向けのゲームソフトウェアを対象に、有害図書類として指定したのであって、リーディングケースにはなり得ません。むしろその逆と言えるでしょう。
例規制を適用したから自主規制がすすんだのではありません。規制以前に自主規制がなされていたけれど、条例規制したことによって自主規制の意味を失い、ゲームを作る人も、売る人も、買う市民も、みんな途方に暮れて困っているというのが真実です。
松沢知事のリーディングケースになるとの説明はまったくのでたらめであり、虚偽の説明で県民を愚弄しています。


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次に、青少年への悪影響の証明が必要ではないかとのご意見です。これまでも、ゲームソフトによるプレイを長時間行うことが、子どもの脳などに少なからぬ影響を与えることについて、いくつかの調査結果があるものの、残虐性の高いゲームが犯罪を誘発するかどうかの科学的証明は、まだ行われていないことは事実です。しかし、先日の東京で発生した両親殺害事件で、加害少年が今回指定したゲームソフトの愛好者であったという報道もあります。
そして、子どもの人格形成においては、単に知識を習得するだけではなく、成長過程で接する自然、文化などの外部環境から様々な影響を受けるものです。特に、感受性の鋭い青少年が、大人よりも社会環境の影響を受けやすいことは社会の共通認識でもあります。青少年の健全な育成を阻害するおそれのある有害な社会環境を排除していくことは、大人社会の責任であり、行政としての責任でもあると考えています。

 
「残虐性の高いゲームが犯罪を誘発するかどうかの科学的証明は、まだ行われていないことは事実」との松沢知事の認識はまったく正しい認識です。
しかし問題は、その認識を知事としてのいかなる判断の前提にもしていない一方で、両親殺害事件で加害少年が愛好者であったという報道についてだけ判断の前提とするという、県民が知っている前提でしか判断しない松沢知事のポビュリズムにあります。
 
板橋の夫婦殺害事件については、加害少年が中学生だった頃に「グランド・セフト・オートIII」が好きだったとの同級生の証言を載せた記事が、平成17(2005)年6月22日付産経新聞及びサンケイスポーツで報じられました。*1この“同級生の証言”については、報じていたのは産経新聞だけで、朝日新聞毎日新聞、読売新聞、東京新聞の四社に確認したところ、「“同級生の証言”については、事実確認がとれていません」と首をひねっていました。
加害少年が「グランド・セフト・オートIII」が好きだったという産経新聞社の記事は、はたして事実だったのでしょうか? 神奈川県は、その事実について、公判における事実認定がなされるまで、判断を留保するべきだったのではないでしょうか?
 
仮に加害少年が「グランド・セフト・オートIII」が好きだったとしても、「グランド・セフト・オートIII」を購入している人は全世界で800万人います。しかし、殺人事件を起こした人は確認されているのは二人だけです。*2その発生確率は、犯罪統計における殺人事件発生率よりも極端に高いというわけではありません。
800万人がプレイしているのにもかかわらず、殺人事件を起こす人は2人だけです。そのたった2人の行動が、「グランド・セフト・オートIII」が原因になっているとの分析は明らかに恣意的ですが、いずれにしても原因と結果に因果関係があることを裏付ける証明がどこにあるのかは不明ですし、神奈川県は県民に対して因果関係の説明責任を果たし得ていません。
ゲームの愛好と犯罪行為との関係は、産経新聞が示している事実関係で判断する限り、“相関関係”にすぎず、従来の「限定効果説」を超える事実が明らかになったわけではありません。
 

松文館事件裁判 意見書
2003年4月30日 東京都立大学人文学部助教授 宮台真司
http://www.miyadai.com/index.php?itemid=59

■暴力的なメディアや性的なメディアが、受け手を暴力的にしたり性的にしたりするという「強力効果説」の発想は、20世紀の初頭に新聞・雑誌・ラジオが大衆化して以降、必ずしも実証を書いたまま、いわば大衆的な通念として流通してきた。今もそうである。
■ところが20世紀の半ばにジョセフ・クラッパーが登場し、数多くの実証的な社会調査を積み重ねた上、「限定効果説」を提唱し、学会の主流学説となった。メディアの(悪)影響を実証的に研究するアプローチ(効果研究)自体も、彼の実証研究を嚆矢としている。
■「限定効果説」とは、暴力的なメディアに接触した子供が暴力的に育つということはなく、たとえそのように見える場合も、実際には「選択性メカニズム」と「対人ネットワーク」というパラメータ(外性変数)が利いている、とする立場である。
■「選択性メカニズム」とは、例えば、もともと暴力的な素質を持った子供だけが、メディアに描かれた暴力に選択的に反応することを言う。逆に言えば、暴力的な素質を持たない子供は、メディアに描かれた暴力に影響を受けないということだ。
■「選択性メカニズム」はしばしば火薬と引金の比喩を用いて語られる。「火薬が充填」されているなら、「引金を引け」ば、弾が出る。もともとある暴力的な素質が「火薬の充填」に、メディアに接触することが「引き金を引く」ことに相当する。
■「選択性メカニズム」の実証は、メディア悪影響論を否定するものだと一般に理解されている。しかし、メディアが「引金を引く」だけなのだとしても、悪影響は悪影響ではないかとする反論が予想される。それに対し、クラッパーはこのように警告する
■火薬が充填されていれば、メディアが引金を引かなくても、いずれ別の要因が引金を引く。だから、メディアを除去することは何の解決にもならない。そればかりか、なぜ火薬が充填されたのかという真の問題を覆い隠す「気休め」に過ぎない、と。
(略)
■結論から言えば、メディアの悪影響についての実証研究は数多くあり、報告書の結論において「悪影響あり」とするもの、「悪影響なし」とするもの、それぞれ存在する。しかし、報告書の中身に立ち入ってみると、実証されている事柄には限りがあることが分かる。
■第一に、対象がテレビ番組の暴力表現に偏っている(前述)。第二に、もともと暴力的素因をもつ子供は暴力的メディアで短期的模倣を生じやすいこと。第三に、暴力的素因はメディアよりも家庭など人間関係要因によって形成されること。第四に、暴力的メディアを頻繁に利用する子供は現に暴力を頻繁に振るっていること。
■第二の、「暴力的素因をもつ子供による暴力的メディアの短期的模倣」については、シュラムとライルとパーカー共著『子供の人生とテレビ』1961年、S.ボール『暴力とメディア』1969年、アメリカ「公衆衛生局長官の報告」1972年など、古典的なリサーチにおいて確認されている。
■第二の裏側になるが、「子供たちが一般的に暴力的メディアを模倣する」という仮説が否定されることは、カナダ下院「テレビの暴力に関する報告書」1993年、国立衛生研究所(日本)の長期的調査(1980年代)によって指摘されている。
■第三の「暴力的素因はメディアよりも人間関係で形成される」ことは、シュラムとライルとパーカー共著『子供の人生とテレビ』1961年、カナダ下院「テレビの暴力に関する報告書」1993年、において指摘されている。
■第四の「暴力的メディアに接触する子供ほど現に暴力を振るう」との相関関係については、アメリカ「公衆衛生局長官の報告」1972年、ベスロン「テレビ暴力と青少年」報告(1978年)、アメリカ心理学会の「1985年の提言」「1990年の提言」に示されている。
■この第四の相関関係は誤解されやすいが、「暴力的メディアに接触したから暴力を奮う」という因果関係は実証されてない。むしろ、もともと暴力的素因をもつがゆえに、一方で暴力的メディアに接触し、他方で実際に暴力を奮うと解釈される必要がある。
■これらの研究を一覧すると分かるように、1950年代のクラッパーが提唱した「限定効果説」における、「選択性メカニズム」(素因)と「対人ネットワーク」(人間関係)が決定的な影響を及ぼすという論点を越える事象は、全くと言っていいほど実証されていない。
■こうした事情を踏まえて、カナダ下院「テレビの暴力に関する報告書」1993年は、テレビの暴力シーンと実際の暴力行為の間に決定的な因果関係(強力効果)が実証できない以上、法的な規制は不適切であり、関係者が協力して問題に取り組むのが良いとしている。

 
松沢知事のコメントは、こうした科学的な知見に基いた政策ではなく、神奈川県民がどう認識しているのかという点を唯一のよりどころとしているのであって、それは畢竟、県民が納得しさえすれば迷信に等しき不合理な規制でも受け入れるとの悪しきポピュリズムにずぎないのではないかと思われます。
 


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行政としての規制を強化するだけで、青少年の有害環境の問題が解決できるとは思っておりません。多感な思春期にある青少年を有害環境から守り、健やかな人格形成を図っていくためには、家庭、学校、業界などがそれぞれの立場でどうしたらよいかを真剣に考え、行動していくことが何よりも重要です。今回の規制は、あくまでも青少年の健全育成を目的とした一つの問題提起であることを、ご理解いただきたいと思います。

 
人々の価値観は単一ではなく、多様な価値観によって社会は成り立っており、民主主義社会は多様な価値観を前提とした社会です。
有害図書類指定を受けた時にすでにkitanoのアレでも指摘しましたが、グランド・セフト・オートIIIは、Game Developers Choice AwardsでExcellence in Visual Arts、Game Innovation Spotlights、Excellence in Level Designの3賞を受賞した、少なくとも他のゲームよりは優れていると評価されている作品です。
神奈川県がどんな「告示」を出そうが、こうしたゲーム作品としての栄誉が無効化されるわけではなく、文化を作ったり享受している側には県とは別なゲームの評価基準が厳然としてある、という事実は否定しようがありません。
松沢知事は「今回の規制はあくまでも一つの問題提起だ」と述べていますが、だったら有害図書類指定という不利益処分ではなく、記者会見や業界関係者との懇談という形でも良かったのではないでしょうか。
問題提起に対する県民のコンセンサスを得てから有害図書類指定という形での不利益処分を実施すべきであり、有害図書類指定という形での不利益処分を実施することが問題提起だと説明するのは、順序が逆でしょう。
松沢知事の言い分は、銀行強盗に押入って金を奪ってから「この金は銀行がオレに貸した金だということにしてほしい」と強盗が言っているようなもので、説得力がありません。
規制すべきであると考えているのなら、規制の合理性があることをまず県民に説明し、県民のコンセンサスを得てから不利益処分という方法をとるべきであり、その説明責任や合意の努力を果たさずして不利益処分を断行するのは神奈川県知事として無責任ではないでしょうか。
 

■神奈川県
http://www.pref.kanagawa.jp/

知事のページ
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/hisyo/chiji/toppage.htm
議会
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/hisyo/chiji/hatugen/gikai/list.htm
神奈川県議会 平成16年6月定例会 知事提案説明
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/hisyo/chiji/hatugen/gikai/h1606.htm

四点目は、首都圏自治体の広域連携の強化に関してであります。8都県市首脳会議では、昨年の秋以来、事務局設置による連携強化を検討してまいりましたが、これについて先月の同会議で同意が得られ、都道府県会館内に個別課題を集中的に検討する事務局を設置することとなりました。事務局は今月中にも発足し、青少年の健全育成に向けた4都県の条例による規制の強化や、三位一体改革への取組みについて、8都県市として検討していく予定であります。
私は、こうした取組みを一歩一歩進め、さらに首都圏の広域連携が一層強化されますよう、力を尽くしてまいる所存であります。

神奈川県知事への電子メールフォーム
http://www.pref.kanagawa.jp/teian/kenmin/f021701.htm
平成17年5月25日知事記者会見 (58分)
録画を見る≫
ゲームソフトに有害図書類指定の諮問について
http://www.pref.kanagawa.jp/stream/kaiken/044q/meta/tk05052503.wvx
インターネット放送局トップ> 知事記者会見
http://www.pref.kanagawa.jp/stream/kaiken/044q/kaiken044q.html

 
松沢知事がウェブログで「この問題については、現在開会中の神奈川県議会でも議論が行われています。」と書いた点については、下記リンクで確認できます。
 

■神奈川県議会
http://www.pref.kanagawa.jp/gikai/gikai.htm
平成17年6月定例会の本会議代表質問・一般質問
http://www.pref.kanagawa.jp/gikai/pg/who.htm
http://www.pref.kanagawa.jp/gikai/pg/101/who.htm

6月24日(金)代表質問
(略)
手塚悌次郎議員(民主党・かながわクラブ)
1.がんへの挑戦・10か年戦略について
2.神奈川らしい産業集積促進方策について
3.青少年の健全育成について
4.教育問題について
6月29日(火)一般質問
(略)
小島健一議員(自民党
1.青少年問題について
※喫煙と非行について
2.教育問題について
北井宏昭議員(民主党・かながわクラブ)
1.有害ゲーム対策について
2.歴史教育について       
3.自転車対策について               
(略)

インターネット議会中継
http://www.pref.kanagawa.jp/gikai/pg/g_chukei/live.htm
6月24日(金)代表質問
手塚悌次郎議員(民主党・かながわクラブ) 54分00秒あたりから
http://www.pref.kanagawa.jp/gikai/pg/g_chukei/0506/KK200506240301.wvx
mms://wmt.fstream.jp/kanagawa-kengikai/KK200506240101.wmv
6月29日(火)一般質問
小島健一議員(自民党) 55分05秒あたりから
http://www.pref.kanagawa.jp/gikai/pg/g_chukei/0506/KK200506290201.wvx
mms://wmt.fstream.jp/kanagawa-kengikai/KK200506290101.wmv
北井宏昭議員(民主党・かながわクラブ) 2時間4分00秒あたりから
※ゲーム規制を絶賛しています。
http://www.pref.kanagawa.jp/gikai/pg/g_chukei/0506/KK200506290301.wvx
mms://wmt.fstream.jp/kanagawa-kengikai/KK200506290101.wmv

小島健一議員(自民党
http://members.aol.com/Kojimakenichi/


小島健一事務所 : 〒227-0063 横浜市青葉区榎ガ丘13-10
TEL 045-988-0838
FAX 045-988-0839

H16/09/28  一般質問原稿①
http://members.aol.com/Kojimakenichi/2005shitumon1.htm

それでは、喫煙と非行との関係はどうなのかということになりますが、未成年者による喫煙をはじめとする様々な不良行為というのは規範意識の低下を招き、刑法に違反する犯罪行為に発展する可能性が指摘されております。

H16/09/28  一般質問原稿②
http://members.aol.com/Kojimakenichi/2005shitumon2.htm

■松沢しげふみ公式サイト
http://www.matsuzawa.com/

松沢しげふみ事務所
〒231-0005
神奈川県横浜市中区本町1-5
西田ビル702
TEL 045−650−1717
FAX 045-681-1888 

民主党選挙総括 2000.8.12.躍進、政権にはおよばず!
http://www.matsuzawa.com/office/kokkai/tackle01.htm

特に、連日のように報道されている、最近の青少年の犯罪は、とても人間の沙汰とは思えないほどの残忍ぶりです。少年法の改正は当然としても、これらの少年達を作り上げてしまった社会、そして教育のどこに問題があるのか、どうあるべきなのかを、もう一度、ゼロから政治の場でも、考えなければならない時に来ていると考えます。

問い合わせフォーム
http://www.matsuzawa.com/form/form.html

■手塚悌次郎議員(民主党・かながわクラブ/川崎市多摩区
http://dpjr.org/member/kanagawa/


〒214-0014
川崎市多摩区登戸2428-403
TEL 044-911-4639 FAX 044-900-1981 

■北井宏昭議員(民主党・かながわクラブ/横浜市戸塚区)*3

http://www.kitai-hiroaki.net/


〒244-0003
横浜市戸塚区戸塚町3870-1
TEL 045-871-5454  FAX 045-871-5459 
info@kitai-hiroaki.net

政策
http://www.geocities.jp/kitai56985698/seisaku.html

 
神奈川県が提供しているラジオ番組に「かながわ情報BOX」という番組がありますが、7月28日に知事が出席して「7月に施行される改正青少年保護育成条例などとともに、リニューアルされる青少年センターを紹介」するそうです。松沢知事がラジオで余計なことをしゃべらなければよいのですが…。
 

■かながわ情報BOX
毎週木曜 午前10時〜10時15分 (RFラジオ日本 1422kHz)
(略)
7月28日(木曜)青少年の健やかな成長を目指して<知事出演番組>
青少年の引きこもり対策や7月に施行される改正青少年保護育成条例などとともに、リニューアルされる青少年センターを紹介します。

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知事の政策遂行の拙速さも、知事に対する批判を拡大させている理由のひとつであるように感じられます。
たとえば、青少年政策をとりまとめ知事に答申を出す青少年問題協議会のメンバーは、規制賛成派のイエスマンばかりであり、知事がやりたいようにやれる前提条件をつくる人たちだけでメンバーを固めています。
もし松沢知事が問題点と論点を把握していて、青少年問題協議会に、哲学、憲法学、法社会学社会学、精神医学、メディア研究、ゲーム開発者、漫画家など様々な階層の専門家を含めてメンバーを任じ、議論させていたら、現在とは異なる結論になっていたでしょうし、知事に対する批判がこれほど集中することもなかったように思います。
トップダウンで決定する場合は、知事自身に批判が集中するので、知事自身が県民と対話を重ねて論点を把握し、拙速な決断を控える必要があります。
県民のコンセンサスを作る努力を知事が怠っていたことは否めません。
 
以下、ネット界隈の話題など。
 

規制懐疑派
http://d.hatena.ne.jp/ZOE-c10h8/20050711#1121059333
http://d.hatena.ne.jp/nekooka/20050709/1120903692
http://diarynote.jp/d/10568/20050711003140.html
http://star.ap.teacup.com/katumori/396.html
http://plaza.rakuten.co.jp/sakzakkan/diary/200507100000/
http://blog.livedoor.jp/mojya_aniki/archives/27625866.html
http://kuwazyun-notameno.blog.ocn.ne.jp/seitainikki/2005/07/post_2f8a.html
http://plaza.rakuten.co.jp/sakzakkan/diary/200507090000/
http://doracken.com/archives/2005/07/post_16.html

今回県側があげた審査の基準

  • 対象の現実性(殺傷又は暴力の対象が現存の生命体と認められること)
  • 手段の現実性(殺傷又は暴力の手段が現実に採り得ると認められること)
  • 場面の現実性(ゲームの場面設定が限りなく現実の社会に近いと認められること)

これは本当に厳しい基準であると、クリエイター自身が一番痛感しているでしょう。今回規制の対象にされたGTA3は技術についてはほぼ一昔前のもので、CGモデリングに関してもそれほどリアリティがあるとはいえません。にもかかわらず場面の現実性・手段の現実性・対象の現実性が高いと判断されたのです。今後ビジュアル面の技術が発達すれば、さらにリアリティのあるゲームが発売されます。そうなればこの基準はクリエーターにとってどうしようもない足かせとなって立ちはだかるのではないかと不安がつきません。採算の手直しや、派手で過激なシーンを有害図書の考慮して泣く泣く自粛せざるをえなくなるからです。

http://carol.seesaa.net/article/4916019.html
http://plaza.rakuten.co.jp/sendatte/diary/200507040000/ (())
http://amanojakuhitorigoto.seesaa.net/article/4911712.html
http://kgotoworks.cocolog-nifty.com/youthjournalism/2005/04/post_f1f3.html
http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20050704#p15
http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20050710/p5
http://d.hatena.ne.jp/Midou/20050709/p2
http://d.hatena.ne.jp/cactus3586/20050708/1120850074
http://blog.livedoor.jp/anotheragito/archives/27358087.html
http://blog.livedoor.jp/darknavy/archives/27531680.html

私が、このゲームに感じた魅力は、
とにかく自由にゲームの世界を動きまわれる事。
ただただ、車を走らせてても気持ち良い。
もう一つの、私の楽しみは
関係ない人を、極力殺さずにゲームを完了させる事でもありました。

http://blog.livedoor.jp/lulu_inu/archives/27355087.html
 
中立
http://k2to.exblog.jp/1214678
http://d.hatena.ne.jp/plummet/20050708/p3
http://hima-biyori.tea-nifty.com/himalog/2005/07/post_5702.html
 
知事擁護派
相対主義ですべてを片付け合理的政策に目が向かない方の例
http://yssaw.at.webry.info/200507/article_4.html
↓選んだ有権者には知事を選んだ責任があります。けれど、有権者から選ばれた知事だからなにをしても良いということにはならないです。投票用紙に松沢しげのぶと書いた人のためだけのために知事という職権が存在するわけではないのですから。
http://doracken.com/archives/2005/07/post_18.html
http://media.paslog.jp/article/48434.html

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関連ログ。
 

ゲーム規制:松沢知事の有害図書類規制論
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050712
神奈川県有害図書類指定のゲームソフト説明会
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050711
総務省:有害情報判定委員会創設
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050627
神奈川県ゲーム暴力表現規制(4):GTA3に有害指定
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050607
神奈川県ゲーム暴力表現規制(3):関連リンク
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050604
神奈川県ゲーム暴力表現規制(2):報道状況
上田清司埼玉県知事「神奈川からの流入を防止のためにゲームを規制する」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050603
神奈川県ゲーム暴力表現規制(1):松沢知事御乱心「生身の人間を殺すな!」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050602
松沢成文知事、ゲーム規制を熱く語る「ゲームが犯罪を招くので全体規制を考える時期だ」
神奈川県「かながわ青少年育成指針」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050405
神奈川県:出版流通規制強化案について意見を募集
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041217
神奈川県の有害環境規制
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040513

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*1:「管理人夫婦殺害 ゲーム好き普通の子 高1長男、三者面談前日に事件 東京都板橋区の管理人夫婦殺害事件で警視庁が殺人容疑で逮捕した高校一年生の長男(15)は中学時代、「技術」の授業が好きだった。同級生の評は「普通の子」。しかし六月中旬には学校を無断欠席するなど“異変”も。事件が起きたのは、三者面談の前日だった。 一人っ子の少年は管理人の父(44)、母(42)とともに二年前の春、板橋区の社員寮に引っ越してきた。親の仕事を手伝うことがあり、寮の関係者が小遣いを渡すと「ありがとう」と無邪気に笑っていたという。 地元の中学校に転入。当時の同級生たちによると、目立つタイプではなく、成績は中ぐらいだった。部活はせず、仲間数人と友人宅に集まりゲームをして遊ぶことが多かった。 少年は、当時はやりの無差別殺人ゲーム「グランド・セフト・オートIII」が好きだった。性格は「暗いわけじゃないし、突然、キレる感じもない」「ゲーム好きの普通の子」。元同級生たちは口をそろえる。 今春、工業高校に進学したが、友人は「志望校には成績が足りず、今の学校になった」と話す。休み時間、一人でミニディスク(MD)を聴くことが多くなったという。 事件が起きる六日前の十四日、初めて高校を無断欠席。このころ、学校では三者面談が行われていたが、少年は、事件翌日への予定変更を申し出た。事件が起き、面談は受けていないままだ。」 http://www.sankei.co.jp/news/050622/evening/23nat001.htm

*2:日本以外では、アメリカ合衆国テネシー州で発生した殺人事件があります。遺族がゲーム会社などを裁判で訴えていますが、訴えられた米娯楽ソフトウェア協会は「少年らの行為のために、多くの人が楽しんでいるゲームを非難するのは的外れで非生産的だ」と反論しています。 http://www.sankei.co.jp/edit/bunka/2003/october/kiji/1023gamekill.html

*3: 民主の北井宏昭議員は田中慶秋(たなかけいしゅう)議員 http://www.keisyuu.com/ の公設秘書でしたが、田中慶秋議員は民社党の活動家で平成7年から現在まで神奈川民社協会の会長を務めています。 http://www.keisyuu.com/p-file/jiseki.html 民社出身議員については鎌倉さんのところの情報などを参照のこと。都議会では名取都議や土屋都議、国会では山谷えり子議員なども民社系でした。「ネット右翼の戯言」分析 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20050408 「民社」系スレッド http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/1274/1073561509/