メディアの裏側・司法記者クラブ:権力の現場

 
第5回は売春賄賂事件、第6回はロッキード事件
生々しいな、権力の現場は。内容はリンク先を読んで確認してください。
 

■国会TVマガジン
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000021957
No.1500 1/18 メディアの裏側(第五回)
第二章 「記者クラブ」というギルド社会 司法記者クラブ(1)
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200501182010000000021957000

「売春汚職の話を教えて下さいよ。逮捕状は本当は三人分あったんでしょ。でも逮捕する前に読売が抜いて(スクープして)しまったから、検察はわざと一人しか逮捕しなかったんじゃないですか。おかげでその記者は名誉毀損で訴えられ、情報源を秘匿したため有罪になり、最後はヒロポン中毒になって自殺してしまった。あの記事は逮捕状を見て書いたとしか思えないですよ。本当は逮捕状三人分あったんでしょ」。
・・・・
「あの人の父親は祖父の代からの裁判官だから司法関係者に人脈があった。検察内部の派閥抗争に巻き込まれて逮捕されたんじゃないんですか。名誉毀損で逮捕というのはひどいですよ。もう今なら話してくれても良いじゃないですか」と古手の記者は検事正に詰め寄る。私はじっと高瀬検事正の顔を見つめた。検事正は水割りを口にしながら何も答えず、ただ静かに微笑んでいた。決して表情を変えず、言葉も発しなかった。「これが権力なんだ」とその時思った。

メディアの裏側(第六回)
第二章 「記者クラブ」というギルド社会 司法記者クラブ(2)
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200501252110000000021957000

高瀬検事正の夜回りが終わると、私はいつものように川島興特捜部長の官舎がある恵比寿に向かった。川島特捜部長は「口なしのコーチャン」と呼ばれ、口が堅いので有名だった。夜回りに行っても「おまえらマスコミは本当のバカだ」を繰り返すばかりで全く取材にならなかった。初めの頃は夜回りに訪れていた社も次第にいなくなり、この頃は毎日新聞共同通信、TBSの三社だけになっていた。
官舎の外で待っているといつも通り午後十時半に川島特捜部長が帰宅した。いつもは外での立ち話なのに、この日は珍しく「中に入れよ」と言った。ところが家に入って応接間で向かい合った途端、特捜部長はくるりと後ろ向きになり我々に背中を向けてしまった。気まずい空気が流れた。毎日新聞記者が「フダ(逮捕状)は取りましたか」と質問すると、「おまえらは本当にバカだ」といつもの答えが返ってきて、そのまま黙ってしまった。
十五分ほどで我々は退散した。外に出ながら「おかしい」と思った。家に入れて何もしゃべらない。どういう意味だ。公衆電話からキャップに電話を入れた。「川島がおかしい。滅多に家に入れないのに家に入れて、すぐ後ろ向きになってしまった」。キャップは「明日、政治家逮捕かも知れない。早朝から地検前に見張りを置こう」と言った。

 
関連図書。
 

不当逮捕
本田靖春 (著)*1
不当逮捕 (岩波現代文庫―社会)
http://d.hatena.ne.jp/asin/400603010X
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検事総長の回想
伊藤栄
検事総長の回想 (朝日文庫)
http://d.hatena.ne.jp/asin/4022606932
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軍拡無用―21世紀を若者に遺そう
宇都宮徳馬
軍拡無用―21世紀を若者に遺そう
http://d.hatena.ne.jp/asin/4795405271

 
宇都宮徳馬代議士と福田篤泰代議士に売春汚職の疑いをかぶせたのは読売新聞の記者でしたが、その読売記者を罠にかけニセ情報をリークしてスキャンダルを作らせた犯人は検察でした。
宇都宮徳馬代議士は、河上肇*2の弟子で、戦前は治安維持法で逮捕されたこともある愛国の志士。戦後も反核軍縮運動自民党幹部として指導し、日本国憲法第九条を実践していました。*3
彼はロッキード事件の時に自民党を離党しましたが、それまではまあ自民党の良心みたいな人だったわけで、だから検察の派閥争いで捨て駒として使われたのではないかという推測もあるようです。
ニセのリーク情報を信じこまされ騙された記者は、ジャーナリスト倫理を守りニュースソースを最後まで秘匿し報道機関の信頼は確保しましたが、読売新聞からは見捨てられ、有罪となり、自殺。
権力と対峙して情報を伝えるという行為には、そういうリスクもあるということの一例かもしれません。(まあニュースソースを守った記者を擁護せず見捨てた読売幹部が悪いという見方も成立しますが)
当時の読売新聞には、文字通り命がけでニュースソースを守った記者もいたわけですが、今の読売新聞にそこまでの覚悟と経験を持った記者がどれだけいて、ニュースソースの秘匿の信頼性はどれだけあるのか。
取材された人の秘密を守れるという前提が不完全なら、それだけ不正を告発する人は少なくなり、ジャーナリズム活動それ自体が成立しなくなっていきます。その結果として悪い影響を受けるのは国民の知る権利です。
 
昨今、NHK政治介入疑惑の話題が広がり、介入したと疑われた政治家

NHK きょうの料理 
http://www.janjan.jp/column/0501/0501212811/1.php

は、スパイ狩りよろしく「誰が何と言ったのかはっきりさせよ」と取材源を明示を平然と求め、それに同調した「安倍萌え族」だかなんだか知りませんが、そうだそうだと追随している人がいるようですが、はっきり言ってそれは、ニュースソースの秘匿なんかどうでもいいと自白しているようなもの。恥を知れと言いたいです。
 
余談ですが、偽りの売春汚職の疑いをかけられた宇都宮徳馬代議士と福田篤泰代議士は、後、衆議院法務委員会で弁明の機会を与えられ、無実を訴えています。
 

■第27回国会 法務委員会 第2号 昭和三十二年十一月四日(月曜日)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/027/0488/02711040488002c.html

○宇都宮委員 
・・・・・
十月十八日 読売新聞朝刊に売春汚職に関係して私及び福田代議士がわいろをとり、召喚必至という記事が掲載されましたが、これは全く事実無根であり、著しく名誉を棄損するものとして名誉棄損の告訴を、私はいたしたのであります。
大げさに六段抜きで取り扱われた記事は、一昨日の法務大臣答弁によっても明白なように、全く事実無根であります。火のないところに煙は立たぬというが、この場合には線香の火ほどの火種もなかったのであります。
どうしてかような記事が出たか了解に苦しみ、私はさっそく読売新聞編集局長にこの不当をなじりましたところ、ニュース・ソースは検察庁であり、確実なものであるという、はなはだ自信に満ちた返答でありました。
記事をよく読んでみましても、いかにも当局、すなわち検察庁から情報が出ているように書いてあります。著しい部分を読んでみますと、東京地検は十七日天野特捜部長総指揮の特捜班を設け、造船疑獄以来の本格的摘発を始めたが、捜査線上に浮かんでいた国会議員約十名の裏づけ捜査を進めた結果、宇都宮徳馬氏、福田篤泰氏の東京出身代議士二人も売春業者からわいろを受けているとの疑いが濃くなった、宇都宮、福田両代議士の召喚も必至と見られる、またそれに続きまして当局は東京都連、地元代議士を結ぶ汚職ルートにメスを入れ、福田、宇都宮両代議士にいずれも二十万――五十万円の工作費が送られている事実をつかんだ、さらに、地検の押収した書類には福田、宇都宮代議士の氏名の上には済みというしるしがはっきりと押されており云々といった調子で、確実な犯罪容疑を当局が発表したようにしか思われないくらいに書かれておるのであります。
あすにても手錠をかけられそうな記事であるのであります。まさに公然事実を摘示し人の名誉を棄損するものであり、しかもその事実たるや誕岡に出るものと申さなければなりません。
しかし、読売新聞編集局長の言うように、もしも検察当局よりたとい非公式にせよ事実が提供せられていたと仮定するならば、刑法第二百三十条ノ二の二項の「未ダ公訴ノ提起セラレサル人ノ犯罪行為ニ関スル事実」であり、それが真実ならざることの責任はもっぱら検察当局にあるのであって読売新聞の罰せられる可能性ははなはだ少いのであります。
この場合には、事実無根のことを、あたかもいまだ公訴の提起せられざる人の犯罪行為に関する事実のごとく、虚偽の情報を故意に提供したと見られる検察当局に当然刑事責任がなければなりません。
公訴提起前の犯罪行為を公表することは、一連の犯罪行為を世論の監視下に置き、捜査機関に捜査の端緒を与えることが目的であります。しかし、発表することはあくまでも真実でなければなりません。虚妄のこと、すなわちうそのことであってはいけません。虚偽の犯罪事実が当局によって言論機関に提供せらざるるがごときことは、重大な人権の侵害であり、善良な国民もまくらを高くして寝ることができないのであります。
私は、読売新聞編集局長の言がもし真実であるならば、事態ははなはだ重大であると思う。私は一国民であると同時に衆議院議員であり、福田氏も衆議院議員てあります。二人の国会議員についてうその容疑事実を流すというようなことは、一検事のよくなし得るところではないと私は思います。私はこの背後に何らかの意図を持った上司の指揮命令を想像せざるを得なかったのであります。
私が読売新聞とともに検察首脳を告訴した理由はここにあるのであります。これについて一昨日唐澤法務大臣は、ニュースが検察庁から出たことはないと申された。しかし読売新聞は今なおニュース・ソースが検察庁であったという主張を私に対し取り消してはおりません。具体的なニュース・ソースの自供は拒否しておるけれども、検察庁から出たということを取り消してはおらないのであります。
しかも、先ほど申し上げました通り、あの記事では、当局は収賄の事実をつかんだ―。地検の資料によれば、犯罪の事実に関することできわめて心やすく検察当局の名を使って真実を装おうとしているように見えるわけであります。法務大臣の言われるごとく、検察庁から流れた故意の情報でないとするならば、かような検察庁を利用した記事の書き方自体についても、少くとも何らかの行政措置、注意するとか警告するとかという行政措置をとるべきであったと私は思う。この点については同僚議員がいずれ質問するであろうと存じます。非常に問題の点であろうと思うのであります。

 
宇都宮代議士の発言を読むと、読売記者が検察にはめられたということはよく理解していたようで、「虚偽の情報を故意に提供したと見られる検察当局に当然刑事責任がなければなりません。」とはっきり言い、「私はこの背後に何らかの意図を持った上司の指揮命令を想像せざるを得なかった」とまで言っています。(まあそう言えたのは宇都宮徳馬代議士だったからかもしれませんが)
現在も尚、検察は誰からも罰せられず、記者だけが有罪になり、あらぬ疑惑をかけられた議員ふたりもその後政治の中枢から姿を消しました。検察はそういう権力なのだということでしょう。

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家に帰る途中で

 

家に帰る途中で -イラク-
http://d.hatena.ne.jp/bmp/20050127/1106809671

 
これも“あの人”が望んだ世界なのでしょうか。
たぶん“あの人”はこう言うでしょう。我らが望む自由な世界をつくるために避けられない副次的損害だ、と。
あの少女が、奴らに死を与えることによって平等は実現されるのだ、と考えるようになることを、いったい誰が止められるでしょうか?
 
“あの人”は2005年1月19日、こう言ったそうです。
 

はるか星のかなたから、自由のために戦えとの呼び声がする。そしてアメリカは常にその大義に対して忠実である。*1
We have a calling from beyond the stars to stand for freedom, and America will always be faithful to that cause.

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