NHK番組政治家介入疑惑(3):各新聞社社説のまとめ

 
結論から書くと、NHKの対応に問題ありと断ずる新聞社が多数で、告発やNHKの「問われる戦時性暴力」の当初内容を批判する新聞社は一部の全国紙に限定されることが判明しました。
まあ予想通りのお馴染みの新聞だけが“従軍慰安婦はいなかった”的番組を擁護していたわけです。
 

■改変真相究明派新聞社(判明分)
中日新聞社(東京新聞)
高知新聞社
愛媛新聞社
熊本日日新聞社
信濃毎日新聞社
北海道新聞
河北新報社
琉球新報社
毎日新聞社
朝日新聞社
日本経済新聞社
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■改変肯定派新聞社(判明分)
読売新聞社
産経新聞社(売上低迷のため夕刊廃止)

 
告発者を糾弾しているアレな人たちの論調が読売と産経や安倍氏のそれとそっくりな理由がわかりました。
以下、当該社説を抜粋引用。
 

中日新聞(東京新聞) 社説2005.01.13
憲法のイロハを無視 放送番組介入
http://www.chunichi.co.jp/00/sha/20050113/col_____sha_____000.shtml
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20050113/col_____sha_____001.shtml

気に入らない番組の放送中止や内容変更をテレビ局に迫る政治家は、日本国憲法の大原則を無視していると言わざるを得ない。「与党国会議員は何でも許される」と勘違いしているのではないか。
当時、両氏とも閣僚ではなかったとはいえ、政権党幹部が放送内容に事前に注文をつけたのは検閲に等しい。政治に弱いテレビだがこれほど露骨な介入は珍しい。
放送法三条の二は放送に政治的公平、論点の多角化を求める。半面、同三条には「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、または規律されることがない」とある。
肝心の三条を無視して公正原則だけを強調する二人こそ不公正のそしりを免れない。第二一条で「一切の表現の自由」を保障し、検閲を絶対的に禁止した憲法のイロハも理解していないのではないか。
中川経産相は一九九九年、所沢産野菜のダイオキシン汚染報道をめぐり、放送には何の権限もない農相だったのにテレビ朝日に農民への賠償を執拗(しつよう)に迫った。「権限と行政は法に基づく」との観念が欠如していると見られても仕方あるまい。
予算、決算が国会の審議対象であるNHKは、ともすれば政治家に迎合する傾向があるように見える。同じような例がほかにもあるのではないかとの疑いも浮かぶ。これを機に、外部メンバーによりNHKと政治の関係を洗い直し公表すべきだ。

高知新聞 社説 2005年01月14日
【番組改変】NHKはもっと説明を
http://www.kochinews.co.jp/0501/050114editor.htm

制作費着服事件とは違った意味で由々しい問題をはらんでいる。
この問題では自民党安倍晋三氏(現幹事長代理)と中川昭一氏(現経産相)が、事前情報をもとに「偏った内容で、公正中立の立場で報道すべきだ」と申し入れたとされる。
申し入れが番組改変と結び付いていたら「表現の自由」にかかわる。
どうして番組情報が漏れたのか。それは改変と連動しているのか。NHKは事実関係をさらに調査し、疑問に答える責務がある。
思い起こすのは24年前の出来事だ。NHKのニュース番組で組まれていたロッキード事件特集の内容が突如、改変された。直前に自民党実力者からの働き掛けがあり、一部幹部がこれに応じたことが、その後明らかになっている。
今回の問題でNHKは「政治的介入はなかった」と強調するが、それでも疑問点は残る。

愛媛新聞 社説2005.01.15(土)
NHK番組介入疑惑 公共放送の基本が問われる
http://www.ehime-np.co.jp/shasetsu/shtsu20050115.html

NHKや国会議員は圧力を否定しており、真相ははっきりしないが、現役職員が記者会見して告発するのはきわめて異例で、重みがある。
事実なら、放送法のうたう番組編集の自由を踏みにじるものだ。憲法の禁じる事前検閲の疑いも出てくる。着服などの一連の不祥事にもまして、受信料で成り立つ公共放送の基本にかかわるゆゆしき問題だ。
NHKの説明では納得しがたい。徹底調査して事実関係を明らかにするべきだ。
番組をめぐっては、取材を受けた団体が「大幅な改編で期待を裏切られた」と提訴したが、東京地裁は判決でNHKへの賠償請求を退けた。しかし「放送と人権等権利に関する委員会」は「放送倫理に違反する結果を招いた」と認定した。
見解の分かれるテーマだけに公正中立に慎重を期すのは当然だ。しかしそれを判断するのはNHK自身であり、番組の評価は視聴者に委ねられている。
NHKは自主判断で編集したと強調しているが、安倍氏の発言の影響はなかったのか。元慰安婦らの証言などをカットし、決められた時間枠よりわざわざ短縮したのも不可解といえる。内容が事前に外部へ漏れ出ていたことも大きな問題だ。
NHKは不祥事を受けた改革で、昨年九月に内部告発制度を設けたばかりだ。しかし、プロデューサーは「告発から一カ月以上たっても聴取すらされていない」と会見に踏み切った。改革の実効性も問われる。

熊本日日新聞 社説 平成17年1月16日(日)
NHK問題 「公共放送」を見直す契機に
http://www.kumanichi.co.jp/iken/iken20050116.html

NHKは「自主的な判断に基づいて編集した。政治介入はない」としているが、もしそうした事実があるのなら、表現の自由を保障し、検閲を禁じた憲法二十一条に触れる重大な問題である。NHKに徹底的な真相究明を求めたい。
この問題について民主党安倍氏らの国会での参考人招致を求めていく方針を打ち出すなど、野党は厳しく追及する構えだ。国会でも事実解明を進めなければならないが、まずはNHKが事実経過を詳細に調査し、自ら公表すべきだろう。
不祥事への批判から視聴者の受信料不払いが急増。昨年十一月末で受信料支払い拒否・保留が約十一万三千件に上り、未徴収額は約十億円に膨らんでいる。
海老沢勝二会長は近く引責辞任する見通しだが、会長が交代したからといって解決する問題ではない。
NHKが視聴者の信頼を回復するためには、不祥事の再発防止はもちろん、政治の圧力に屈しない、透明性が確保された組織に変えていく必要がある。

信濃毎日新聞 社説 1月14日(金)
社説=番組介入問題 NHKも説明が必要だ
http://www.shinmai.co.jp/news/20050114/mm050114sha8022.htm

NHKの特集番組をめぐり重大な問題が浮かんだ。自民党の有力政治家が「偏った内容だ」としてNHKに対し、放送前に申し入れをしていたというものだ。憲法が保障する表現の自由を揺るがしかねない言動であり、許されることではない。
政府の要職にある政治家らが番組づくりに介入する―。こんなことがまかり通れば、政府は自らの意向に沿うよう番組の中身を変えることができる。憲法が禁じる検閲につながりかねない。放送後にあれこれ批判するのとは重大さが違う。
番組をつくるうえで公正さ、中立さが求められるのは当然だ。従軍慰安婦問題という政治的なテーマを扱うからには、なお配慮を要する。とはいえ、政治家が口出しする事柄ではない。公正かどうかはテレビ局と視聴者が判断することである。
NHKの予算や決算は国会が承認する。与党の有力な政治家による番組への指摘は強い圧力になる。そこを踏まえ、政治家の側は報道の自由を損なわないよう自制する必要がある。事実であれば、安倍、中川両氏の言動はけじめを欠いたものと言わざるを得ない。
NHKの対応も疑問や不信を抱かせる。報道機関として責任を負う相手は視聴者、国民だ。テレビがあれば払うよう法律で定められた受信料に支えられてもいる。政治家の働き掛けに屈して内容を改めたとすれば視聴者は裏切られたも同然だ。

北海道新聞 社説
NHKと政治*及び腰では信頼を失う(1月15日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/backnumber.php3?&d=20050115&j=0032&k=200501156705

プロデューサーの訴えと、政治家、NHKの主張は隔たっている。
しかし一連の動きで浮き彫りになったことがある。それは政治に及び腰なNHKの姿勢だ。公共放送として政治との適正な間合いをどうとるか。大きな課題が浮上したといえるだろう。
はっきりしていることは、呼ばれたのではないにしろ、NHKが放送前の番組内容を政治家に説明し、その後番組を直したことだ。通常の編集の範囲だと主張しても、政治的な配慮を疑われて仕方がない状況を生み出した。
放送法は「放送番組は、法律に定める権限に基(もとづ)く場合でなければ、何人からも干渉され、又(また)は規律されることがない」と定めている。報道の自由を守る大事な規定を忘れたような行動は、やはりまずい。李下(りか)に冠を正さずだ。
内部告発制度に基づく訴えに十分対応しなかった点にも問題がある。迅速に調査していれば、少なくとも事実関係をめぐる混乱はなかった。
番組に問題が起きた場合、内部調査だけで終えていいかという疑問もある。外部の目を導入し、報道の客観性を高める努力をしている報道機関は多い。法律で設けられている番組審議機関の活用も含め、検討していい課題だ。

河北新報 社説
NHKの説明責任/政治家にでなく国民にこそ
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2005/01/20050114s01.htm

放送の前日、当時官房副長官だった安倍晋三・現自民党幹事長代理と中川昭一・現経産相がNHK幹部と会い「偏った内容だ」などと指摘した経過があったことは両氏も認めている。
憲法は言論と表現の自由を保障し「検閲はこれをしてはならない」と定める。放送法はこれを受け「放送番組は法律に定める権限に基づく場合でなければ何ぴとからも干渉され、または規律されることがない」とする。
NHKは「国会議員に事業などを説明した際に番組が話題になったことは事実だ。しかしそれで公正さが損なわれたことはない。編集責任者が自主的な判断で編集した」と弁明する。
しかし、国民は信じるか。
プロデューサーは放送前夜と当日、元慰安婦の証言や民衆法廷天皇を有罪とした部分などをカットするよう指示があったと証言。「中川、安倍両氏の了解を得るため作り変えたのは明らかだ。海老沢会長はすべて了解していたと思う」と述べた。
その通りなら政治介入の疑いが濃い。結果として検閲にあたるとさえ取れる異常事であり、両氏を含めた当事者の関係当局による聴取も必要になろう。

琉球新報 社説2005年1月15日(土) 朝刊
番組改変・NHKは事実関係調査を
http://www.ryukyushimpo.co.jp/shasetu/sha30/s040115.html#shasetu_2

NHKが四年前に放送した特集番組で、番組を担当したチーフプロデューサーが会見し「政治的圧力を受けて、放送前に番組の作り変えを命じられた」と内部告発した。
事実としたら放送番組に対する干渉を禁じた放送法に違反する可能性があるばかりか、事前検閲にあたり、言論・表現の自由を保障した憲法にも抵触する恐れもある。同じメディアとして看過できない問題だ。
安倍、中川両氏とも「事実と全く違う」と否定しているが、安倍氏は当初「関係者から情報があり、事実関係を聞いた結果、明確に偏った内容と分かり、NHKに指摘した」とコメントしている。
事実と違うなら、どこがどう違うのか具体的に明らかにすべきだ。「関係者から情報があり」というのも気になるところだ。どうして番組内容を入手できたのか、それと番組変更がどうつながっているのか、重要な部分だ。
NHKは職員の不祥事で揺れているが、今回の問題はジャーナリズムの根幹を揺るがす問題をはらんでいる。視聴者の信頼を得るためにも、徹底的に検証し、番組の中で説明していくのがNHKの義務だろう。

毎日新聞 社説2005年1月15日
NHK特番問題 政治に弱い体質が問題だ
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/archive/news/2005/01/20050115ddm005070150000c.html

市民団体側がNHKなどを相手に起こしている賠償請求訴訟で、東京地裁の1審判決はNHKの責任は認めなかったものの、番組が当初の企画と変わった点は認めている。
これに対し、安倍氏は「NHK側から『予算の説明を行いたい』というので会った。その際、番組について説明があり、私は『公平公正な報道を行ってもらいたい』と述べた」と説明。この番組が放送されることは「心ある関係者から情報が寄せられた」という。
だが、そもそも事前に、しかも密室で番組内容を政治家に「ご説明」すること自体が報道機関として異常なのである。そして、どんな言い回しであろうと、こうした状況下での政治家の発言は、「介入」「圧力」に等しいと受け止めるのが世間の常識ではないか。
表現の自由を保障した憲法21条は検閲を禁じている。放送法も、放送番組に政治的公平や事実を曲げないよう求める一方で、「何人からも干渉されない」と規定している。安倍氏もそれを知らないわけではなかろう。番組に問題があると言うなら、放送後、オープンな場で批判する機会はいくらでもあるはずだし、最終的には番組を評価するのは視聴者である。

朝日新聞 社説 01月13日付
NHK――政治家への抵抗力を持て
http://www.asahi.com/paper/editorial20050113.html

もし、このような行動が許されるなら、NHKの番組すべてが政治家の意向をくんだ内容に変えられる心配がある。報道の自由や、民主主義そのものが危うくなってしまう。
自民党は報道番組検証委員会や報道モニター制度などを設けて、選挙報道やニュース番組などをことあるごとにチェックしてきた。事実誤認や不適切だと考える表現には抗議、訂正を要求してきた。が、それは放送後の番組に対してだ。
番組の内容がどうであれ、放送前に行動を起こせば事情はまったく違ってしまう。2人は自民党の次代のリーダーと見られている。自分たちの言動の意味をきびしく問い直してもらいたい。
NHKは「自主的な判断で編集した」と繰り返している。だが、2人の政治家は発言を認めている。NHKは事実関係を徹底的に検証しなくてはならない。それが再生にもつながる。

01月14日付 《天声人語
http://www.asahi.com/paper/column20050114.html

「私の趣味は○○」の、○○のところに入る言葉は、人によって千差万別で、数限りなくある。しかし、そこに自分の属する会社や役所、団体の名前を入れている人は、そう多くはないだろう。まして、それを公言する人は、ごくまれではないか。
そのまれなことを記者会見でしてみせたのが、NHKの海老沢勝二会長だ。「私は『趣味はNHK』と言っているほど、NHKを更に発展させなければならない立場……」*1。NHKへの思い入れは十分過ぎるほど分かるが、趣味としてのNHKとは、何を指すのだろう。あの巨大な組織か、それとも番組や報道の内容か、あるいは会長職なのか、釈然としなかった。
告発したチーフプロデューサーは記者会見し、顔と名前を明かして述べた。改変について「会長はすべて了承していた……会長あてに作成された報告書も存在している」
会長が答える番だ。問題の大きさと深さは、とうに趣味の範囲を超えてしまっている。

日本経済新聞 社説
社説2 公共放送の独立性を貫け(1/14)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20050113MS3M1300R13012005.html

NHKは公共放送である一方、独立した報道機関である。報道の自由憲法で保障されており、放送法でも法律に定める権限に基づく場合でなければ、誰からも番組に干渉されないことになっている。政治家が事前に内容を知り、政治的圧力を加えていたとすれば、憲法で禁じる検閲に通じる行為だといえる。
 NHKは国民の信頼を回復しようと経営委員会の改革など組織の立て直しを進めている。今回の問題についても、改変にいたる経緯を明らかにし、慰安婦を巡る当初の制作内容が妥当だったかどうかも含めて、報道姿勢を改めて検証し、結果を国民の前に示すことが公共放送機関としての信頼を回復する道である。

 
一応、“自由はイケナイ”派の社説も紹介しておきます。
 

■読売新聞 社説 1月15日付・読売社説(2)
NHK番組問題「不可解な『制作現場の自由』論」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050114ig91.htm

そもそも従軍慰安婦問題は、戦時勤労動員の女子挺身(ていしん)隊を「慰安婦狩り」だったとして、歴史を偽造するような一部のマスコミや市民グループが偽情報を振りまいたことから、国際社会の誤解を招いた経緯がある。
偏向しないバランスのとれた報道が必要だ。それが、NHKの責務である。

 
読売の説明は誤報ですね。従軍慰安婦がいたのは事実であって、国際社会の誤解を招いたのは教科書問題で右翼団体の意を受けていた中川・安倍両氏です。
いわゆる「河野官房長官談話」では、従軍慰安婦問題が事実であるとの前提で「われわれは,歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返えさないという固い決意を改めて表明する。」と書いてあり、政府公式見解として従軍慰安婦の存在を認めています。
 

平成13年度早稲田大学法学部水島ゼミ(憲法)前期「教科書問題」
http://mizushima-s.pos.to/lecture/2001/010606/010606.html
参考資料3「河野官房長官談話」の全文
http://mizushima-s.pos.to/lecture/2001/010606/010606_08.htm

参考資料3 「河野官房長官談話」の全文*2
今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置管理及ぴ慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに開与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれぱ、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた間題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。
われわれは,歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返えさないという固い決意を改めて表明する。
なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており,政府としても,今後とも,民間の研究を含め,十分に関心を払って参りたい。

 
くり返しますが、この談話は政府の公式見解ですので、もし安倍元官房副長官と中川経済産業大臣従軍慰安婦が無かったとの見解を持ち、閣僚としてこの談話を否定する見解を表明しているのだとすれば、これは外交権を有する内閣の見解を覆す外交関係上の重大な閣内不一致であり、閣内不一致の責任はすなわち、任命者である小泉純一郎内閣総理大臣の行政権上の責任が発生していると考えられます。おそらく次の国会では、政府はこの点が追求を受けることになるでしょうし、野党はこの点を追求すべきです。
もし小泉総理も「従軍慰安婦は存在しない」というような見解を出すようなことになれば、外務省のアジア外交はその瞬間から一歩も進まなくなり、国際社会からつまはじきされることになり、中国政府から日中平和友好条約の締結破棄が通告されるようなことになれば(たぶんならないとは思いますが)日本経済は混乱へと向うことになるでしょう。
つまり、どっちにしても、小泉総理は、安倍中川の発言が「内閣としてではなくあくまでも個人的な失言にすぎない」という形で安倍中川氏に責任をとらさざるを得ません。*3
国際社会から誤解を招いているのは安倍氏たちでは?
偏向しないバランスのとれた報道が必要だ。それが、読売新聞社の責務である。
 

産経新聞 主張
NHK慰安婦番組 内容自体も検証すべきだ
http://www.sankei.co.jp/news/050115/morning/editoria.htm

番組で放送された女性国際戦犯法廷は、元朝日新聞女性記者が代表を務めたNGOが主催し、元慰安婦や各国の女性活動家を集めて開かれた。慰安婦を「戦時性暴力」の犠牲者ととらえ、昭和天皇やいわゆる「A級戦犯」を裁いた模擬裁判だ。法廷は女性を中心とする判事団と検事団で構成されていたが、弁護団はいなかった。

産経抄 平成17(2005)年1月16日[日]
http://www.sankei.co.jp/news/050116/morning/column.htm

 
弁護のチャンスは用意されましたが、弁護しなければならない関係者は弁護を放棄して逃げたというのが真相のようです。
産経新聞はまず自らの誤報から正し、どうして夕刊を廃刊にせざるを得なくなるほど読者が減ったのかを分析した方が良いのではないかと思います。余計なお世話か。
念の為、産経新聞の主張が誤報であろうと思われる根拠を引用しておきます。
 

NHK番組改ざん訴訟 安倍氏の発言 事実を歪曲 VAWW―NETジャパンが反論
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-01-18/15_02.html

声明は、安倍氏が「法廷」について、「被告と被告側の弁護人がいない」「主催者の松井やよりさんが、裁判の会場を九段会館に決めたのは悪の根源である皇居に一番近いからだと明言した」などとしている点について具体的に反論。
(1)法廷開催二カ月前に全裁判官名で、当時の森首相に被告(国)側弁護人の出廷を要請したが、何の応答もなく、裁判官が弁護士を「法廷助言人」として被告側の弁護をとり入れた
(2)松井やよりさんは法廷の主催者ではなく*4安倍氏指摘の内容を発言したこともない
(3)会場を九段会館にしたのは宿泊施設を併設して予約可能だったからにすぎない――などを示しています。

安倍晋三氏の事実歪曲発言について
VAWW-NETジャパン抗議声明
http://www1.jca.apc.org/vaww-net-japan/nhk/appeal050117.html

 
オマケのNEWS23
 

■TBS NEWS23
多事争論 2005年1月12日(水)「21条」
http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s050112.html
http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s050112.ram

しかしながら番組の内容がそういう圧力なのかどうかわかりませんけれども、そういうことで改ざんされたり歪められたりするということになりますと、これは国民にとっての損害はもっと大きいとある意味では言えると思います。何をやるにしろ、自由にものを言う雰囲気というものを無くした上で事が進むのは大変危険であります。少なくともどんな憲法になるにしろ、21条*5の精神というのは変わらないはずですから、そのことに基づいていろんな議論をしたいものであります。

多事争論 2005年1月13日(木)「コンプライアンス
http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s050113.html
http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s050113.ram

他局に起きた不祥事をあげつらうのではなくて、実はこれは政治とメディアの関係という事でいえば、あらゆるメディアにとって共通のテーマでもあるし、危険でもあります。更にいえば国民の知る権利というのがどうやって守られるのか、それが私は問題の基本だと考えております。

多事争論 2002年4月10日(水)棘(トゲ)
http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s20410.html
http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s20410.ram
多事争論 1995年11月9日(木)「両論」
http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s51109.html

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関連ログ。
 

NHK受信料横領問題(1)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040914
NHK受信料横領問題(2)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040915
NHK受信料横領問題(3)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040916
NHK受信料横領問題(4)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040917
NHK受信料横領問題(5)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041126
NHK不祥事:生活ほっとモーニング事件最高裁判決
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041127
NHK受信料横領問題(6)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041220
NHK受信料横領問題(7)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041222
国が燃える」事件の顛末(その3)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041209
NHK番組政治家介入疑惑(1):長井記者会見
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050114
NHK番組政治家介入疑惑(2):長井記者会見(その2)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050115

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*1:「趣味はNHK」というNHKの海老沢勝二会長の発言は、ヒトラーの「妻はドイツ」発言を連想させるナァ。

*2:外務省 慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話 平成5年8月4日 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html 読者さん、つっこみサンクス http://d.hatena.ne.jp/dokusha/20050118

*3:もしかしたら小泉総理がこの事件の裏にいるのでは?との噂があるのはそういうことでしょう。たしかに安倍氏はポスト小泉筆頭でナンバー2を抹殺してきた小泉総理にとって次のターゲットでしょうし、中川氏はスキャンダルがありすぎてこれ以上爆弾を抱えていられないという判断があってもおかしくありません。天木直人さんも小泉首相は喜んでいるかもしれないと書いていますね。→天木直人・マスメディアの裏を読む「NHKの長井プロデユーサーは真の勇者だ」 http://amaki.cocolog-nifty.com/amaki/2005/01/1140511.html

*4:■追補2005.01.22 誰からとは書きませんが、ある方からメールをいただきました。「犯国際法廷の主催者にちゃんと名前を連ねていますので主催者と言うことで間違いはありません。http://www1.jca.apc.org/vaww-net-japan/womens_tribunal_2000/organizer.html情報源が不正だったんでしょうか?今度からは不正な情報を鵜呑みにしないように気を付けて下さいね。」だそうです。VAWW-NET Japanは主催の一部であることは承知しておりますが、産経新聞の社説の「番組で放送された女性国際戦犯法廷は、元朝日新聞女性記者が代表を務めたNGOが主催し、」との表記はVAWW-NET Japanだけで主催されているという前提になっているという意味で誤報だと指摘されていると理解しておりました。たしかVAWW-NET Japanの記者会見でもそういう意味のことを言っています。http://www1.jca.apc.org/vaww-net-japan/nhk/appeal050117.html まぁ惨K新聞は「番組で放送された女性国際戦犯法廷は、元朝日新聞女性記者が代表を務めたNGO主催に参画し」と正確に書いておけば、その部分については誤報だと批判されなかったんですけどね。という意味では赤旗の「松井やよりさんは法廷の主催者ではなく」という表現も不正確で「松井やよりは日本の代表として共同代表の一人であった。」と書けばよかったと思います。というわけで、追補しておきます。

*5:日本国憲法 「第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 ○2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。 」 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html