コンテンツ「健全化」法案衆議院通過

2004年5月14日、「一切の教養・娯楽は健全でなければならない」という内容を含むコンテンツ「健全化」法案(コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案)を委員会成案とする動議が自由民主党公明党民主党の三党共同で提案され、即日実質審議入りし、20分程度の審議の後、即日全会一致で可決しました

動議に賛成したとされる衆議院内閣委員会の委員名簿*1
http://www.shugiin.go.jp/itdb_iinkai.nsf/html/iinkai/iin_j0010.htm

首相官邸 官房長官会見(速報)
http://www.kantei.go.jp/new/press.html
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/rireki/2004/05/11_a.html

平成16年5月11日(火)午前
閣議の概要について
次に、大臣発言として、まず、小泉総理から「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案」が国会に提出されているが、本法律案は科学技術政策及び情報通信技術(IT)政策に関連するものであるため、その国会対応については、茂木科学技術政策・情報通信技術(IT)担当大臣にお願いする」旨、発言がございました。これに関連して、科学技術政策・情報通信技術(IT)担当大臣から発言がございました。

石田敏高(国会議員政策担当秘書)
石田日記 5月12日(水)
http://member.nifty.ne.jp/toshitakaishida/diary.html

 今日、内閣委員会理事会で自民党議員立法の「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案」が協議され、一部修正のうえ、民主党も入って議長提案される見込みだ。この法律、理念法みたいなもので、漠と「国は保護すべし・・・」とか「配慮すべし・・・」とか書いてあって、それ自体は結構な内容で反対しにくいものなんだけど、疑うと怪しい所もあるんだよなぁ(「青少年の健全な育成に配慮し」とか「自治体の責務」とか「外国における著作権の保護」とか)。こういうのをあまり審議せずに通していいのかいな。理念法に沿って具体的な法が作られてくると、もう後戻りできなくなるような気がするのだが・・・・。

自由民主党 会議情報
http://www.jimin.jp/jimin/kaigi/index.html

5月13日(木)
◆政調、経済産業部会知的財産政策小委員会、
司法制度調査会知的財産権の法的保護・特許裁判のあり方に関する小委員会、知的財産制度に関する議員連盟コンテンツ産業振興議員連盟、マルチメディア懇話会ブロードバンドコンテンツ小委員会合同会議
午前8時 本部101室
[1]知的財産戦略本部 権利保護基盤の強化に関する専門調査会の報告(模倣品・海賊版対策の強化について(取りまとめ))
[2]「知的財産戦略推進計画」の見直しに当たっての提言について

衆議院公報平成16年5月13日付第81号
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kouhou.nsf/html/kouhou/it1590513_l.htm
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kouhou.nsf/html/kouhou/17BDF6_159513.htm

第159回国会 第81号 平成16年5月13日木曜日
○明14日次のとおり開会する。
 ▲内閣委員会
 午前9時10分 第13委員室
 会議に付する案件
 公益通報者保護法案(内閣提出第一一〇号)
 コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案起草の件

衆議院-衆議院公報
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kouhou.htm
衆議院 第159回国会内閣委員会の動き一覧
http://www.shugiin.go.jp/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Ugoki/naikaku159.htm

衆議院TV ビデオライブラリ 5月14日内閣委員会
http://www.shugiintv.go.jp/top_frame.cfm

衆議院 議案 
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm
コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案 経過
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1D94522.htm
コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案要綱
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/youkou/g15901007.htm
コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案 本文
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g15901007.htm

第六条
2 コンテンツ制作等を行う者は、そのコンテンツ制作等に当たっては、コンテンツが青少年等に及ぼす影響について十分配慮するよう努めるものとする。

14日の内閣委員会で質疑に立った委員。

中山義活衆議院議員(東京2区選出/内閣委員会民主党筆頭理事)
http://www.yoshikatsu.com/
吉井英勝衆議院議員(日本共産党)
http://www.441-h.com/

委員会質疑の音声ファイルを便宜的・一時的にウェブサイトで公開しました。
そのうち消えますので、欲しい人はお早めに。

衆議院内閣委員会5月14日
コンテンツ「健全化」法案(コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案)の審議と採決 (音声ファイル/2370kb)
http://members.at.infoseek.co.jp/kitanok/20040514syu-naikaku.wav

質疑に立ったのは、民主党中山義活衆議院議員日本共産党の吉井英勝衆議院議員のみで、自由民主党公明党の各議員は質疑を放棄しました。
日本共産党も動議に賛成し、反対者がいませんので討論もありません。(社民党には議席がありません)
今後は、衆議院本会議での採決、参議院での審議が見込まれます。
いわゆる「健全配慮義務」については、修正されないまま三党共同提案となったようですので、「健全配慮義務」に関して言えば、民主党は全面的に屈服妥協したと思われます。(というか、もともと民主党には異論のある人があまりいません)
衆議院内閣委員会で質疑に立った中山義活衆議院議員は、「健全配慮義務」に関する国民の批判を意識していたためか、「自由な発想の創造」を強調していました。
しかし、委員会を通過した法律案には、政府が「健全」の基準を策定し、あるいは「健全」の基準を運用し、あるいはコンテンツの健全度を調査し、あるいは不健全なコンテンツを特定・選別し、あるいは不健全なコンテンツを健全にさせるための措置などについて政府が独自の施策を講じることを排除する具体的な歯止めとなる条文が、存在しません。
仮にこの法案が成立した場合、理念法としてのコンテンツ「健全化」法案を踏み台にして、将来、「健全配慮義務」に違反するコンテンツの調査予算が組まれたり、あるいは「健全配慮義務」に違反するコンテンツの排除手続きや排除措置のための根拠法が検討されることになるだろうと予想します。

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コンテンツ「健全化」法案の動議提案代表者。

山本拓衆議院議員(自由民主党)
http://yamamototaku.jp/
第159回国会提出法案(審議状況は4月30日現在)
5,技術開発と産学官連携に関する法律案
http://yamamototaku.jp/report/komoku00.htm

念のために書いておきますが、山本拓議員のウェブサイトでは「成立」と書いていますが、法案は委員会を通過しただけで、衆議院本会議、参議院では可決しておらず、現時点では「未成立」です。

■kitanoのアレ
第159国会のメディア・表現規制関連立法提出状況。(3月13日現在)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040314#p1
コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案(旧コンテンツ事業振興法案)の疑問
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040312#p1
文化審著作権報告書
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20031211#p2

ひとつコメントしておきますが、この法案が成立すればコンテンツを創っている人が大儲けできて喜ばしい、などという認識は間違いです。
第2条で示される「コンテンツ事業者」とは、コンテンツ事業を主たる事業として行う者であり、「コンテンツ事業」とはコンテンツの制作、利用、知的財産権管理を業として行う者ですので、たとえばアニメーション番組で制作主体が放送局にある場合は、放送局がコンテンツ事業者であり、下請アニメーターは法律の保護の対象外*2です。
つまり、「制作」を担うコンテンツのメーカー、中間利益を搾取している放送局、出版社の利益のためにコンテンツ「健全化」法案は存在しているのであって、メーカー(放送局)が発注しているコンテンツの部品を供給している下請アニメーター、漫画家のアシスタントさん、その他諸々のコンテンツ部品製造者は、法案の利益を十分に受けることができません。(そもそもこの法案は理念法で、具体的な手続きはなにも決まっていないに等しいですが)
コンテンツの部品を製造している人は、いくらそれがクリエイティブなものであったとしても、また一般から認められる創造性を持っていたとしても、法律上の恩恵の対象にはなりません。
制度の恩恵を受けるためには、コンテンツのメーカーにならない限りダメです。
メーカー(放送局)と下請との関係の規律は、あくまで下請法などの個別手続法によって確保され、コンテンツ「健全化」法案がメーカーと下請との関係をなにか調整したり規律したりするものではない、ということを理解する必要があります。

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*1: 14日当日、動議に賛成しない議員を排除するなどの理由で、委員の異動がある可能性があります。

*2: ただし、アニメーターの制作集団が放送局と共同で制作主体となっているような場合、放送局の言うことになんでもハイハイ言って言われた通りの番組を作るだけのアニメ制作会社は、法律上のコンテンツ事業者として制度の恩恵を受ける可能性があります。